国内起債市場を斬る 起債評価:11/28~12/2

11月29から複数案件が散発的に募集され、12月2日の金曜日に多くの案件が条件決定されている。12月2日の条件決定案件の中には、ボーナスシーズン入りしたこともあって、複数の個人投資家向けの起債が条件決定されている。電力会社では、北海道電力・東北電力・四国電力がいずれも3年債を条件決定している。クーポンは、北海道電力債が0.15%で、残りの2電力債は0.14%である。広島ガスは4年債0.23%を条件決定しているが、三井住友トラストホールディングスの10年劣後債の0.62%クーポンはインパクトが強い。しかし、投資家は今後10年もの間、金利が上昇しないと考えるのだろうか。この銀行の行員から時々耳にする、企業カルチャーを感じる条件である。

機関投資家向けに募集された案件では、メーカー等の中期債に対して、一部の超長期債という構図が特徴だろうか。概ね、起債の消化状況も好調な案件が多かったようである。前週までに不調な感もあった10年電力債も、火曜日の中部電力こそ国債利回り上昇の中で、絶対金利水準の設定を誤って苦戦したものの、金曜日の北海道電力債は0.36%クーポンとしたことで、順調な消化となった。前週の電源開発・四国電力・北陸電力が0.26%クーポンで苦戦したのに、同じクーポンで追随した中部電力の戦術に誤りがあったと考えられる。

レア物の中期債が多く募集されたのも目立つ。フジ・メディアホールディングスの第5回5年債と第6回7年債や、アシックスの初回5年債、ナブテスコの第2回5年債、ジェイテクトの第6回5年債と第5回7年債といった辺りが、レア物と言って良いだろう。利回り面での魅力は強くないが、希少性が投資家のニーズを引き寄せたのである。また、三井不動産や横浜ゴムの3年債は0.001%クーポンを付して、日銀買入れ見合いのニーズを集めている。

超長期債の募集も相変わらず多い。15年債で南海電気鉄道、20年債で中部電力・三井不動産・東武鉄道・北海道電力、40年債で三井不動産・大阪ガスと合計で計630億円が募集されている。鉄道や電力・ガスについては、構造的に安定した収益が確保できることで、超長期債に違和感はないが、果たして不動産会社の20年債や40年債は投資対象として適切だろうか。震災リスクやオリンピック後、人口減少等の環境変化を考慮すると、住宅ニーズの限界は見えているし、オフィスについては常に更新を続けない限り、陳腐化による需要縮小は必至である。投資家は、それらも踏まえて、投資しているのだろうか。更に、金利上昇の可能性を考えると、時価評価を求められる業態は投資し難いと感じるのは、筆者だけであろうか。

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