国内起債市場を斬る 起債評価:9/4~9/8

上期末が近づき、実質的な起債募集も次の週の半ばぐらいまでで一旦休憩である。そうなると、上期の起債をという発行体が出て来る。一方、投資家側もマイナス金利の下で預金残高を多く残すことを適切とは考えないことから、資金消化に注力する。国債を購入すれば流動性は高いのだが、一般債に比して利回りが極度に悪化するため、手が出し難い。この週は再び10年国債の利回りがゼロからマイナスとなる局面もあったため、例えば、5日に募集されたジーエスユアサ・コーポレーションの10年債は利回りが0.44%で、国債対比のスプレッドが+44bpsであった。つまり参照国債の利回りは0%だったのである。国債を購入しても利回りがないのに対し、社債を買えばプラスの利回りなのである。0%に対して0.44%なので何倍とは言えないのであるが、よほど外れた条件設定をしない限り、投資家のニーズは根底にある。

消化状況を見ると、スプレッドが適切に付されていて割高感のない銘柄や、年限が長く絶対利回りを確保できる銘柄を中心に、売行きがよいようである。かつてのような日銀トレードを前提にした3年債を最低クーポンの0.001%で募集するようなことは、ほぼ見られなくなりつつある。それでも、社債の供給が必ずしも多くないために、クレジット分析の観点からは、タイトな条件での募集は少なくない。

社債を募集した発行体の業種は、見事に分散している。電気機器、鉄道、不動産、電力、化学、食料品、建設、ノンバンク、商社、造船とメーカーも多様である。募集年限は、やや7年債が5年債より目立つか。5年債は国債利回り低下の影響を受けて、どうしても利回りの絶対水準が魅力を欠く。また、北海道電力やダイセル、JA三井住友リースは5年債と7年債の組合せ(ダイセルは10年債を含む三本立て)を募集している。5年債を募集している中でも、日立造船は格付けがJCRのBBB+格ということもあって、0.57%クーポンが付されている。都市再生機構の20年財投機関債が0.578%クーポンであり、ほぼ同水準になっている。

クーポンがもっとも高かったのは、都市再生機構の30年物財投機関債が0.944%で、次が豊田通商の20年債0.887%であった。残念ながら、1%を越えるクーポンの起債はなかった。最低クーポンは住宅金融支援機構の5年物財投機関債の0.04%クーポンで、3年で募集された五洋建設債の0.14%を下回っている。

9月の起債シーズンは、次週の中盤まででほぼ終わる見込みである。幾つかの起債観測は上がっているが、今週のような起債ラッシュとはならないようである。

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