国内起債市場を斬る 起債評価:9/11~9/15

前週後半、つまり9月6日~8日が上期最後の起債ラッシュであった。9月も10日を過ぎると、一気に案件の動きは乏しくなる。民間の起債と公共セクターが混在しているものの、既にピークを過ぎた感が強い。火曜日に募集された大栄不動産の起債を見ると、3年債25億円に7年債15億円という組合せである。よほどのことがない限り間接金融によって資金繰りは支えられるだろう。クレジットアナリストは、金融関連のAI技術が更に発展する前に、金利水準の低下とクレジットスプレッドの薄さによって、ほとんど失業してしまうことになるだろう。現に米系大手投資銀行では、アナリストの大幅人員整理が始まっていると聞く。

オリンパスの5年債は、R&IのA-格を得て100億円を募集している。既に2011年に判明した過去の不正会計事件は忘れられたようであるが、今年に入って過去の経営陣に対する損害賠償請求が東京地裁で認められる等決して遠い過去の話ではない。もっとも、この2017年判決の原告は株主とオリンパスであり、社債の償還可能性を悪化させるものではない。ただし、不正会計事件で受けた傷は決して癒えていない。既に光学カメラのウェイトは低下し、内視鏡や顕微鏡といった医療関連が売上の多くを占める他、我々も日々愛用のICレコーダーにおいても高いシェアを有している。今回の起債は、高い利回りが評価されて順調に消化されたようであるが、前週の日立造船と同様に、格付けが必ずしも高くないために、利回りが高く投資家から好感を持たれたようである。年限が長過ぎなかったことも評価できる。

全般的に案件が少なかったことから、極端な不人気な銘柄は聞こえていない。京王電鉄の10年債及び20年債の組合せも、金額が大き過ぎなかったことに加え、国債対比のスプレッドが10年債で+29bps、20年債で+20bpsと厚めに設定されたことも、順調な消化に貢献したようである。一頃に比べてやや利回り水準が低下しているとは言え、鉄道会社である京王電鉄の20年債で0.761%の利回りが得られることから、ポートフォリオの投資年限長期化が可能な投資家にとっては、魅力的に映ったことだろう。

順調に消化されたとされる鹿島建設の7年債については、やや投資家の短期的な視点が気になる。足元では、東京オリンピックに向けた建設ラッシュ等でゼネコンの業績は好調に見える。しかし、人手不足や資材価格の高騰といったコスト悪化に加えて、不動産価格の低迷と東京オリンピック前の建設ピークアウトを考えると、7年債という年限設定は適切だったかどうか怪しい。とは言え、上期最後の民間起債になるのでは、という無い物ねだりの投資家心理も手伝って、「五輪後問題」としては何ら問題にならなかったのであろう。

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