国内起債市場を斬る 起債評価:9/18~9/21

今年の9月は、敬老の日と翌週の秋分の日と、三連休が二度続いた。実質的な上期の起債シーズンは、14日で終わったと思ったが、この週を狙って案件が入り込んできた。募集された一つは、中日本高速道路の第74回4年債700億円である。区分としては社債になるが、純粋な民間事業会社の社債ではなく、日本高速道路保有・債務返済機構による重畳的債務引受条項が付されており、実質的には、財投機関債と同等の信用力を有していると考えられている。高速道路運営会社を破綻させることは現実的でないし、いざという時は政府に夜支援が期待できるのであるが、歩的な債務保証が付されておらず、「暗黙の政府保証」に留まると解される。なお、債務が日本高速道路保有・債務返済機構に順調に移管されているかどうかを確認することも必要であり、「暗黙の政府保証」を期待するには多くの作業前提を要する。

もう一つは、地方公共団体金融機構のFLIP債である。四半期の最初の月に複数のFLIPに基づく債券の募集されることが多いが、今回は四半期末に1銘柄のみという変則的な募集であった。取扱いは、三菱UFJモルガンスタンレー証券であり、19年債50億円が募集された。FLIPに基づく地方公共団体金融機構債は、公募とされているものの、ほとんどが30億円から50億円での募集が多く、金額面からも、また、募集の状況からも限りなく私募に近い位置付けとされる。ただし、地方公共団体金融機構は、地方公務員共済組合連合会等の公的共済団体向けに縁故債を発行しており、これらは完全な私募とされている。FLIP債については、日本証券業協会から公社債店頭売買参考統計値も公表されている。

実質的に上期の債券市場の募集は終了したが、募集直前に北海道胆振東部地震の発生で、募集を見送られた北海道電力の電力債は、今後に被るであろう大きな影響が懸念される。募集直前に大きな環境変化が生じたために、募集を延期したのは適切な判断であったが、やや単なる地震の影響から数ヶ月の募集延期ということにならない可能性もある。地震からの復旧・復興に時間がかかることだけでなく、道内全域がブラックアウトしたことで、北海道電力の経営に与える影響は小さくない。特に、苫東厚真火力発電所が直接被った被害だけでなく、同発電所への一極集中によるリスクが懸念されるようになっている。背景には、泊原子力発電所が再稼動できていないこともあるが、苫東厚真火力発電所の使用燃料は石炭である。石炭火力発電に対して環境面から投融資を控える機関投資家も増えてきており、今後の北海道電力は、財務面における収支の点のみならず、ビジネスモデルに対する観点からも、見直しが必要になって来る可能性が高い。

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