国内起債市場を斬る 起債評価:11/29~12/3

相変わらず、社債等の募集は金曜日への集中が著しい。12月に入った途端、年末に向けてのラスト・スパートがはじまったかのようであったが、12月1日の水曜日に募集されたのは東洋紡の7年ソーシャルボンドのみで、翌2日には中部電力の二本立て、東京センチュリーの二本立て(7年債は個人向け)、阪急阪神ホールディングスの5年サステナビリティボンド、エクシオグループの5年グリーンボンド、北海道電力の個人向け3年債の条件決定と、単純な機関投資家向けの債券募集は少なく、SDGs債か個人向け債が主力といった感じであった。しかし、3日の金曜日になると、一気に案件が噴出する。

3日に募集された社債等をすべて挙げるのは、意味がないだろう。シニア社債、劣後債、財投機関債など様々であるが、少しグループ分けしてみたい。いずれのグループにも入らない案件もあるし、複数のグループに分類可能なものもあるが、足元の起債市場の特徴を端的に表すことが出来るだろう。

【グループ1:3年~5年債】
海外金利の上昇やクレジット市場の落ち着きから、日銀による社債買入れオペの停止や見直しを要望する声は少なくなく、特に、5年債まで拡大した対象は早急に収束されるべきであろう。やや慌てて募集しているという感もあるが、3年債と5年債の募集が目立っている。本来、5年債は起債市場の主軸の年限であったが、5年の国債金利水準を大きく押し下げ、結果として社債等の投資妙味を失わせているのは、日銀による強力な金融緩和である。関西電力の5年債300億円、ホンダファイナンスの0%利回り3年債100億円及び5年債200億円、ジャックスの5年グリーンボンド100億円、DM三井精糖ホールディングスの5年債100億円、旭化成の0%利回り3年債100億円及び5年債200億円、西日本高速道路のソーシャルボンドが0%利回り2年700億円及び5年800億円、東京都競馬の5年債100億円、高島屋の5年グリーンボンド100億円、大成建設の5年グリーンボンド100億円、北陸電力の個人投資家向け4年債100億円、東急の個人投資家向け5年債100億円、JR九州の0%利回り3年債100億円、四国電力の個人投資家向け3年債125億円、水資源機構の0%利回り3年サステナビリティボンド50億円と銘柄数も金額も多い。

【グループ2:SDGs債】
2020年度から増えて来たSDGs債の募集も、既にこの週は木曜の募集の多くがSDGs債であっただけでなく、金曜での募集も数が多い。5年債以内のものはグループ1で挙げたが、それ以外の長めの年限でも、北陸電力の10年グリーンボンド100億円、東急の10年サステナビリティボンド100億円、都市再生機構のソーシャルボンドが20年及び40年各100億円と募集されている。ICMAが原則やガイドラインを提示しているカテゴリーの中で、サステナビリティリンクボンド以外の物は、すべてがこの週に募集された形である。相変わらず、投資家のSDGs債に対する需要が強いだけでなく、発行体の興味も高いことがわかる。

【グループ3:超長期債】
機関投資家が利回りを求める方向としては、低格付けに向かうか、超長期に向かうかしかないが、より好まれるのは、信用力の高い発行体による超長期の債券であろう。超長期債で募集されたのは、グループ2で触れたSDGs債以外では、R&IでAA-格の九州旅客鉄道の20年債100億円、R&IでAA格等を取得している新関西国際空港の20年債100億円及び30年債180億円が見られている。
低格付けの超長期債というのは、この週でも劣後債での募集例は見られるが、早期償還が行われるならば、それらは超長期債でなくなる。劣後債で募集されたのは、10年経過以降償還可能な中国電力の劣後債1,000億円及び5年経過以降償還可能なサントリーホールディングスの劣後債420億円である。劣後プレミアムが乗っているために、同じ格付けのシニア社債より利回りが高くなり、募集金額も大きくなっている。

12月の社債等の募集は、13日の週の半ばくらいまでになるものと思われる。最大でもその週の金曜日でギリギリだろう。起債観測の上がっている銘柄もまだ多く残っており、もう暫く忙しい日々が続きそうだ。

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