国内起債市場を斬る 続決算月特別号:11/7~11/11

円ドルレートの動きの大きさに目を取られたのか、起債市場の動きは鈍い。引続き、9月末決算発表の時期であり、今月中旬以降の社債等募集シーズンに備えているようでもある。起債観測の上がっている銘柄は少なくないが、相変わらず、劣後債やSDGs債などの名前も多く聞こえて来る。メーカーでも、電機関連で通常の社債やグリーンボンドを募集する準備が進んでいるようだし、鉄道等運輸ではグリーンボンドの他にサステナビリティボンドの動きも見られる。通常の社債を募集する準備もかなり多くの企業で進んでいるようであり、決して起債市場が停滞しているということではなく、来月中旬までの年内最後の起債シーズンに備えていると見るのが適切であろう。財投機関債等の動きも複数あるようだし、現在の閑散期と打って変わって、年末に向かって市場は慌ただしくなることが予想される。

この週で募集された社債等はわずかに2銘柄である。まず、地方公共団体金融機構が定例の10年債を募集している。他の年限が付随しないというのも珍しいが、260億円を0.449%クーポンで募集した。発行金額も大きくない中で、クーポンが上昇していることもあって、地方の投資家から根強いニーズがあったものと思われる。10年国債利回りに対するスプレッドは+20bpsとされており、地方債の個別銘柄対比でも十分に魅力がありそうだ。

唯一民間企業によって起債されたのが、電源開発の第82回債であった。年限は10年でクーポンは、切りよく1%とされている。再生可能エネルギー関連の資金使途としたグリーンボンドの認定を得ており、投資家としては購入し易い銘柄になった。電源開発の格付けは、R&IのA+格に対しJCRのAA+格と大きなスプリットが存在しており、投資家による評価は容易ではない。潰れる可能性という意味では否定的に考えられるが、直接の小口電力販売に従事しているものではないため、代替性があると見ることも出来る。もっとも、同種の発電事業者と比べると歴史的な経緯も含めて残在韓は大きい。同じ10年の地方公共団体金融機構債と比べると、スプレッドのみならずクーポンの絶対水準も魅力的である。170億円という募集金額は決して大きくないが、グリーンボンドという認定を含めて多くの投資家は、総合的判断で購入し易かったようだ。

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