国内起債市場を斬る 起債評価:11/21~11/25

前週の市場で見られた盛り上がりは、イリュージョンだったのだろうか。結果的には、水曜日である11/23が勤労感謝の日だったために、休日明けの営業日には社債等を募集しづらいという市場慣行から、この週での社債等の募集は限定的なものとなった。しかも月末に近いという事情もあって、財投機関債も住宅金融支援機構の第187回貸付担保債券が募集されただけとなり、寂しい週となった。考えようによっては、12月に入ってからの起債ラッシュに向けてエネルギーを蓄えているのでは、という期待がないでもない。聞こえて来る起債観測を見ても、ノンバンクや鉄道等運輸といった定番に近い銘柄に加えて、種々のメーカーによる起債も準備されているようである。ボーナスシーズンを当て込んだ個人投資家向けの社債募集も複数あることが判明しており、徐々に盛り上がりの熱が戻って来るものと期待したい。

この週の民間企業による社債は、結局二つの発行体に限られた。一つは、火曜日の22日に募集された三井金属鉱業の5年債である。非鉄金属に分類される三井グループに所属するメーカーであり、金属精錬の他に、電子材料・自動車部品などを製造している。日経平均株価にも採用される企業であるが、直接の消費財メーカーではないため、知名度はさほど高くないようだ。もっとも、同社の創業地としてもよい神岡鉱山が鉱毒のカドミウムを排出したことで、イタイイタイ病が発生しており、同社の製品は知られていなくても、しでかした事は良く知られている。現在の格付けはJCRのA-格であり、イタイイタイ病の補償による財務面での圧力は、ほぼ影響が無くなったと考えて良いようである。5年債という年限の設定は悪くなく、必ずしもフリークエントイシュアーでないこともあって、100億円の募集金額は問題なく消化されたものと思われる。

もう一つの発行体は、本田技研工業のノンバンク関連会社であるホンダファイナンスであった。お定まりの3年債及び5年債のセットを25日の金曜日に条件決定し、今回は各150億円が募集金額であった。実質的な親会社である本田技研工業の業況については、決して良好とは思えず、ESGが強く意識される中でガソリンエンジン搭載自動車の先行きは決して明るくない。先進国以外の市場においても、よりクリーンな移動手段が求められるようになっており、ハイブリッドカーだけでなく、燃料電池車などの新規領域への技術革新が求められている。ホンダファイナンスの格付けは、R&IのAA格及びムーディーズのA3格という高格付けを獲得しており、3年債及び5年債という年限設定も投資家が不安を抱くような年限ではない。それでも、5年債のクーポンは0.495%に設定されており、前述の三井金属工業の0.58%と比較すると、格付け対比で割安感を持った投資家も少なくなかったのではなかろうか。今回の起債が第78回及び第79回であり、目新しさがないというのも利回りを押し上げる材料となったようだ。

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