国内起債市場を斬る 起債評価:6/26~6/30

株主総会シーズンは起債市場が閑散となるために、3月期決算以外の企業や株主総会を終えた企業にとっては、絶好の社債等を募集するタイミングになる。事前の準備をしっかり行うとともに、同時期に不祥事等のヘッドラインイベントの生じないことといった条件はあるが、他の発行体による動きが少ない中では、条件設定等に際しても証券会社と細かい調整を行い易い可能性がある。投資家側には株主総会シーズンだからと言って、社債等を購入しない理由はないので、発行体の工夫次第である。この週は3月期決算企業による株主総会開催日の多くが集中する6月最終週であったが、実際には幾つかの起債が出て来た。

イオンフィナンシャルサービスはイオングループの銀行や保険、カード等を担う子会社である。親会社の中心的なビジネスが小売業ということもあって、金融子会社も決算期を2月としているため、この時期の起債は容易であろう。3年半物の社債を250億円と5年物の社債150億円を募集している。他に募集する社債のないタイミングで、大手証券5社に加えて準大手証券を数社引受シ団に組入れるという盤石な消化体制であった。

条件決定の総額を押し上げたのは、みずほフィナンシャルグループの個人投資家向けの社債である。クレディスイスのAT1債が株主でなく投資家に負担を求めたため、春先には銀行社債に対して懸念する声も見られたが、日本の制度において同様の事態が生じることは考え難い。今回は10年物950億円と5年経過後期限前償還可能となる10年NC5債1,430億円を条件決定し、ボーナス期間を意識した6月末から7月頭の申込期間を設定している。購入金額は100万円単位からで、分散投資が推奨される中では、小金持ち以上の富裕層がターゲットとされるが、メガバンクに関してはToo Big To Failであると用心して購入を考える個人投資家も少なくないだろう。

6月末日に募集されたのは、アコムの3年債と5年債各100億円に加えて、東京建物の10年物200億円のサステナビリティボンドと、ヤマトホールディングスの10年物200億円のグリーンボンドであった。東京建物は、当初5年物も含めた起債観測が報じられていたが、最終的には10年物に絞って募集したようである。東京スクエアガーデン等実際の物件を起債対象にできる不動産会社にとっては、SDGs債の取組みは難しくないだろう。なお、東京建物は12月決算を採用している企業である。一方、ヤマトホールディングスに関しては、なぜトランジションボンドでなくグリーンボンドにしたのかが疑問である。対象は、EVや太陽光発電とされておりグリーンボンドに問題はないと思われるが、他の陸運や海運での起債歴を見ても、温室ガス排出抑制の努力に焦点を当てたトランジションボンドとした方が妥当ではなかったか。日本でのトランジションボンドの認定は他国と比べて緩いのではないかという疑念はあるが、日本の起債市場における状況を見ると、トランジションボンドの活用は幾つかの業種にとっての有効なソリューションであるかのように思える。なお、ヤマトホールディグスは6月23日に株主総会を終えている。

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