国内起債市場を斬る 起債評価:12/11~12/15

2023年の起債シーズンも、社債等が募集されるほぼ最後の週になる。1年前のこの週の募集状況を見ると、地方公共団体金融機構のFLIP債に加えて、銀行持株会社とガス会社の劣後債があり、それに野村総合研究所の三本立ての起債が見られている。今年は地方公共団体金融機構の5年債・10年債・20年債の定例募集がこの週にずれ込んでおり、FLIP債は募集されていない。金利水準が上昇したこともあって、劣後債の募集は銀行関連で少し見られるが、事業会社による劣後債の募集は減少している。上昇した国債利回りに加えて、信用スプレッドと劣後プレミアムを加えると、出来上がりの調達コストは従前より大きく上昇した形になってしまうのを嫌ったものだろう。もっとも、今後金利が更に低下するという見透しは難しく、少なくとも日銀が人為的に押下げて来た利回りが中立的な水準にまで戻ることを考えると、早めに社債等で資金調達しておくことを考える発行体も出て来ることだろう。今月の金融政策決定会合が終ってしまうと、もはや年内に社債等を募集するのは難しい日程であるが。

地方公共団体金融機構以外に社債等を募集したのは、民間の3社のみであった。アコムは3年債250億円を募集している。日銀が継続している社債買入れオペの対象になることが期待されることもあるが、0.55%とクーポンが随分と高水準になっている。マイナス金利政策の解除がすぐに行われる可能性は高くないが、短い年限の金利水準もこの1年で大きく上昇していることが確認できる。

残りの2本は、いずれも5年債が募集されている。昨今の起債市場では、国債利回りが全体に上昇しており、実際にイールドカーブは概ね2013年4月の異次元の金融緩和導入直前のものと概ね同程度の位置にある。そのため、5年債でも十分に高い利回りが得られる状況となっており、5年債での調達が多く見られる傾向にある。まず、23年ぶりに社債を募集した古河機械金属は、JCRのBBB+格という評価もあって、クーポンが1.2%と高くなっている。1%の利回り確保に汲々として来た投資家としては、信用力の評価として投資可能と判断できるならば、十分な投資妙味を感じられるだろう。

もう一つは、住友不動産が0.628%クーポンで300億円の社債を募集している。かつて格付の片脚がいわゆる投資適格を下回った発行体から見れば、現在のR&I及びJCRからAA-格と高評価を得ているのは、隔世の感がある。しかも、グリーンボンドの認証を得ていることで、国債対比のスプレッドは+32bpsと発表されている。国債と同程度の信用力を有すると目される地方公共団体金融機構の5年債が、国債対比+10bpsで募集されたことを考えると、R&Iの評価で2ノッチ下回るだけであるものの、22bpsしかスプレッドが異ならないのは衝撃的ですらある。ここまでで、実質的に年内の社債等の募集は終了すると見られるが、金融政策決定会合が19日に終了した後、ギリギリのタイミングで募集があるかに注目したい。

コメントは受け付けていません。