国内起債市場を斬る 起債評価:8/15~8/19

今年の8月は週単位で見ても起債が停まることがない。決して起債が多い訳でなく、むしろ細々と途切れることがないという感じである。今月に入って募集された社債だけで見ると、第一週が成田国際空港の10年債50億円と20年債100億円の二本立てのみ。第二週が丸井グループの3年債150億円と5年債100億円の二本立てのみ。そして、第三週は大和証券グループ本社の10年債300億円のみである。結果として、計5本700億円であり、起債ラッシュの時期なら1日分にも満たないのである。これも、五輪と季節の差なのであろう。

大和証券グループ本社は、R&IのA格及びJCRのA-格を取得している。10年債はやや長めの年限だろうか。グループの中核を占める大和証券の将来ビジョンを考えると、根本的に、10年という年限には疑問が生じる。マイナス金利下にあることで、長い年限の調達をより低利で行える環境にあることは認めよう。しかし、昨今の超長期債ブームに付きまとう危惧と同様に、発行体の事業内容というよりも、金融資本市場における証券業界という観点から、妥当な募集年限であるかの判断は必要である。大和証券というグッド・ネームよりも、証券業務の特性をもっと意識するべきであろう。

一方、社債を投資する際に、大和証券グループ本社という個別のネームについても、信用力判断において重要な材料である。銀行業務といった付随的な展開はさておき、果たしてグループのコアである大和証券のビジネスについてどうかという観点である。株式取引手数料の自由化を経てネット証券が個人取引の過半を占めるようになる等、証券ビジネスは大きく変貌している。加えて、金融機関窓口での投資信託の販売や金融商品仲介業務の開始を経験したのである。銀行系証券による統廃合、大手銀行との提携を経て、証券会社は大きく変貌してきている。その中での、野村、大和等の独立系の将来像については様々な意見が収まらないでいる。歴史的に日和見だった日興証券と三井住友フィナンシャルグループは同じ傘下に入り、みずほと三菱UFJの残りのメガバンクは、銀行系証券子会社に既存の準大手証券を複数統合する形で、新たな大手証券を作り上げた。結果的に残った大手証券二社は、法人ビジネスの基盤が制約を受けるようになった。それでも、過去の繋がり等から銀行系証券と共同主幹事等を務めることで凌いではいる一方で、アジアでのグローバル展開は必ずしも結実していない。その意味において、大手二社とりわけ大和証券グループの10年後の姿について、確固たる信用力まで想像できるだろうか。投資家は。独立系の野村證券と大和証券の大統合も含め、何が起こっても不思議ではないと認識して投資すべきであろう。

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