国内起債市場を斬る 起債評価:8/22~8/26

例年、上期末の起債ラッシュは、8月最後くらいからのイメージであるが、どうも今年は動きが早い。この週は24日の水曜日から大量起債がはじまり、25日木曜日26日金曜日と、大規模の起債が続いている。金額で見ると、24日は計850億円、25日は1,250億円、26日は1,800億円となっている。2015年は21日金曜日に700億円募集された後、25日火曜日に100億円、26日水曜日に400億円と振るわず、ようやく27日木曜日に700億円、28日金曜日に800億円が募集されている。今年は、早めかつ募集金額も多めに推移している。

起債ラッシュの中で、傾向としては二つが指摘できる。いずれもマイナス金利政策下で続いている状況であるが、一つは、超長期債の募集である。小田急電鉄は20年債を募集したが、当初80億円規模だったものが、100億円に増額されている。名古屋鉄道の20年債も同様に、150億円へ増額されている。その他にも、住友化学が20年債100億円、東京建物が15年債100億円、近鉄グループホールディングスが15年債100億円と、様々な業種が超長期債を募集したのである。

もう一つの傾向が、低格付け債の募集である。BBB(R&I)格及びBBB+(JCR)格の富士電機は7年債150億円、BBB+(JCR)格の牧野フライス製作所が10年債50億円、BBB(R&I)格及びBBB+(JCR)格の近鉄グループホールディングスが15年債100億円、BBB+(R&I)格及びA-(JCR)格のNECキャピタルソリューションは3年債100億円を募集している。既に国債利回りがマイナスになっているために、国債対比スプレッドが機能しなくなっており、低格付け債の募集には一つのチャンスとなっている、

年限の超長期化にしても、低格付け債にしても、従来の環境では高利回りが求められるものであるが、足元の環境では利回りを求める投資家の強いニーズが見られるために、ほとんどの起債が順調に消化されるようになっている。それでも、流通市場の実勢に鑑みて割高とされる起債銘柄、例えば、中部電力と関西電力の7年債や住友化学の10年債は、大量の社債が供給される中で、販売に苦戦した模様である。起債ラッシュの中での集中募集も考えものであろう。

なお、26日に募集された日本学生支援機構の2年物財投機関債は、0.001%クーポンであるが、100.002円のオーバーパー発行であり、最終利回りは0%になっている。マイナス利回りの国債よりはましだと言う判断ができるものの、バイアンドホールドで許される加減に到達した感がある。9月下旬に開催される日銀の金融政策決定会合に向けて、市場参加者の思惑が交錯する展開が続くだろう。引続き、上期末の起債ラッシュに注目していきたい。

コメントは受け付けていません。