国内起債市場を斬る 起債評価:8/29~9/2

例年通り、まさに「起債ラッシュの週」であるが、やや状況を異にしているのが、起債年限と顔触れだろうか。まず、超長期の起債が明らかに目立っている。住友理工のように知名度の低い発行体が、50億円とはいえ、15年債を募集したのは驚きである。しかも、業種的に考えて、やや無理のある年限だし、10年債150億円との二本立てである。東武鉄道の15年債も、R&IでA-格という評価を考えると、鉄道でありながら年限は長い。更に、西日本鉄道も20年債100億円を募集しているし、三井住友トラストホールディングスは永久劣後債を計1,000億円募集したのである。ノンコールが10年もしくは15年と設定されているものの、10年先又はそれ以降の信託業界の姿は見え難い。

もう一つの特徴は、巨額の起債である。パナソニックは歴史的にも大規模な起債を行って来た発行体であるが、今回も総額2,000億円程度の起債とされていたが、結局、発行登録していた4,000億円全額の募集を行っている。年限としては、5年債だけで2,000億円を占め、7年債が700億円で、10年債が1,300億円となっている。総じて人気を集めたようであるが、金額が少ないことでわかるように、真ん中の年限である7年債の売行きは相対的に優れなかったようだ。しかも、前後に募集された東北電力や中国電力の7年債も販売需要は決して芳しくなかったのである。10年は主要年限であるだけでなく、金利の指標となっているが、7年債は金利上昇の影響も強く受けていないのである。

パナソニックの起債は計4,000億円と巨額であるが、果たして同社の将来性はどうなのであろうか。確かに知名度は高い。しかし、格付けはR&IのA格及びS&PのA-格でしかない。決して知名度ほど信用力は高くないのである。これまでも巨額の社債を数回発行しており、事業展開にもやや限界が見えつつある。社債投資は株式と異なって、事業の発展性や成長はさほど考えなくても良い。むしろ安定的に元利金を支払われることが重要なのである。金融機関との関係や事業継続の安定性を評価して投資する必要がある。

信用力の高さという意味では、パナソニックの5年債が0.19%クーポンであるのに対し、R&IでAA+格を有するデンソーの5年債は0.01%クーポンである。確かにパナソニックの発行額が大きいとは言え、R&IでA-格のあおぞら銀行の5年債は0.1%クーポンである。金融機関に対しては公的資金が注入される可能性もあり、特に、今回あおぞら銀行が募集した債券は、TLAC適合債ではなく、元本が毀損する可能性はより小さい。G-SIBs(国際合意に沿って、自己資本比率規制に関する告示に基づき、グローバルなシステム上重要な銀行)でない銀行であるから当然と言えるのであるが、それよりもパナソニックは高いクーポンを払っているのである。

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