国内起債市場を斬る 起債評価:9/5~9/9

予想通りの展開であるが、債券の募集は週の後半に集中している。休み明けには動きにくいとか、火曜日には国債の入札があるとか、色々理由は考えられるのだが、この週は火曜日が30年超長期国債の入札で木曜が5年中期国債なのである。と言っても、木曜日に5年債を募集したのは、東洋紡績・都市再生機構である。決して国債の入札があるから、募集できないのではない。単に、週の後半が迫らないと、発行体も引受証券も投資家も動きたくないのかも知れない。

募集金額と言う意味では、水曜日に三菱商事がハイブリッド債を2,000億円募集しており、週末のウェイトが高いわけではない。しかし、木曜日も財投機関債等公的セクターだけで計2,150億円募集しており、民間セクターを合わせると2,950億円に上るのである。ちなみに、金曜日はソニーの計2,000億円の起債に加えてソフトバンクグループの劣後債710億円があり、同社の個人向け債の条件決定4,000億円を加えると、合計では7,410億円にまで上るのである。

ソフトバンクグループについては、有利子負債の比率が昨今の債務抑制を是とする風潮の中でも異常に高いことに加えて、M&A行動によって会社の信用力が大きく変化することがあり、安定的な投資対象として捉えるのは間違っているのではないか。企業の成長力を投資の目的とする株式投資には向いている可能性がある一方、利息と元本の回収を目的とする固定金利投資には向かない投資対象なのである。そういう意味では、今回の劣後債による調達は単純な普通社債の募集よりは、発行体の特性に即している可能性が高い。機関投資家向けの25年債及び27年債、個人投資家向けの25年債のいずれも、期限前償還条項が付いており、基本的に5年債もしくは7年債になることが期待されている。引受証券は90銭という高額の引受手数料を受取っており、投資家も償還までの期間のクーポンは3%か3.5%と高水準である。発行体であるソフトバンクグループも計4,710億円の資金調達が可能になっており、三方にメリットがあったように見える。しかし、償還期限が延長されるケースを考えてみよう。また、資本性が認定されるとは言え、負債である以上支払利息の負担は嵩む。結果的に、株主に対する収益の還元余力が低下する可能性が高いのである。

9月の起債シーズンも後1週間程度である。更に、イオンの劣後債も募集が予定されている他、メーカー等の起債観測が上っている。その後に、日本銀行の金融政策決定会合が控えていることを考えると、上期末までに社債を発行したい企業と購入したい投資家のニーズは合致していそうだ。

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