国内起債市場を斬る 起債評価:11/14~11/18

細々だが、ようやく起債市場が再開している。9月末決算の発表時期で案件が進まなかったのであるが、同時に、米大統領選の結果による影響を見据える必要もあった。事前の大方の予想に反して、トランプ候補が勝利したというのが、最初の誤算であり、次に、トランプ候補が勝利しても、リスクオフとならず、むしろリスクオンの展開となり、円安・株高のみならず、日米の金利が上昇したのも誤算と言って良いだろう。慌てて日銀が指値オペを初実施して市場のセンチメントを変えることに成功したが、初物のインパクト効果が今後も継続するかどうか。結局のところ、金利が大きく上昇した10年以上のゾーンに直接指値で買入オペを行なったのではなく、短い年限でアナウンスメント効果を狙った指値オペが、次回以降も有効かどうかは、市場の受け止め方次第となる可能性が高い。

トランプショックを受けての金利上昇は長めの年限で顕著となった。そのため、中国電力の20年債は0.712%クーポンと高利回りになり、結果として、順調な消化状態となった。一方で、0.26%クーポンしか付されなかった同社の10年債は売行きが芳しくない結果となっている。その他の財投機関債等を見ても、長めの超長期の起債が面白かったと言える。都市再生機構の20年債0.487%や30年債0.695%クーポンは、いずれも国債対比のスプレッドプライシングを実施されており、金利上昇の恩恵を直接に反映している。こういう局面では、常道に立ち返り、愚直にスプレッドプライシングを実施する方が、投資家の受けが良いだろう。

一方で、中期年限の一般債のプライシングは、日銀の強いコントロール下にあるため、超長期年限のような面白さは見られない。鉄道建設・運輸施設整備支援機構の5年債は0.001%クーポンの100.001円でオーバーパー発行だったりする。残りの10年債と15年債とでは、国債対比のスプレッドプライシングが実施されているものの、5年債ではまだまだマイナスの闇が深いのである。

もっとも人気となったのは、日本電産の3年債であろうか。A+(R&I)格及びAA-(JCR)格ということもあって、クーポンは0.001%となっている。レアな高格付け発行体ということだけでなく、3年という年限設定から日銀による買入期待もあって、飛ぶように売れたようだ。相変わらずの中央銀行による市場の歪みである。社債市場においても観察されるようになって既に久しいが、国債市場全般が歪んでいる現状を見ると、3年ゾーンだけ歪になっている社債市場は、まだましなのかもしれないと感じさせられる。

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