国内起債市場を斬る 起債評価:1/9~1/13

1月の起債時期は実に短い。正月休み明けは直ぐに動けないし、成人の日で三連休があり、米国がMartin Luther King Jr. Day(1月16日)で休場となると、なかなか市場は盛り上らない。そうこうしている間に月後半となると、12月決算の発表スケジュールを視野に入れなければならない。個人投資家向けの起債はボーナスシーズン明けで幾つか見られるが、本格的な起債シーズンは2月中旬からの1ヶ月勝負というのが、毎年度末の展開である。

四半期の頭ということで、登場した起債(同時起債)の一つに財投機関債等の公共債セクターがある。日本政策投資銀行の3年債・5年債・10年債の三本立て、地方公共団体金融機構の10年債・20年債の二本立て、住宅金融支援機構の10年債・20年債の二本立てとで、合計7本1,300億円が募集されている。この中で目立ったのが、10年国債の流通利回りがプラス圏になり、10年債が国債対比のスプレッドプライシングとなったことだろう。従来からプラス圏にあった20年債は当然だが、10年債が国債対比+14ないし15bpsで条件決定されたことに留意したい。

四半期の頭で登場したもう一つの起債が、電力債であろう。ほぼ同業と言っていい電源開発を加えると、中部電力が6年債と20年債の二本立て、中国電力が8年債と15年債の二本立て、電源開発が7年債と計5本で1,000億円が募集されている。超長期の二本は国債対比のスプレッドプライシングが行われているが、それ以外の6年債・7年債・8年債はクーポンの絶対水準でプライシングされている。しかし、中途半端な年限となった中国電力債だけでなく、国債利回りが上昇したために投資家と発行体の目線が離れてしまった超長期電力債も、消化には苦労したようである。東京電力の起債があるかと見られている中で、投資家の電力債に対するスタンスはより慎重になっている可能性がある。

この週でもっともうまく行ったのは、JR東日本の10年債・20年債・30年債・40年債の四本立てとバンドー化学の5年債・7年債の二本立てかもしれない。前者は国債利回りの上昇で絶対水準の確保できる長期・超長期の起債である。各年限100億円ずつで、最長の40年債のみ200億円に増額されている。40年債は1.119%と1%を超えるクーポンになっており、そのことが投資家の需要を集めたようだ。一方、バンドー化学はレア物の起債であり、募集金額も各30億円ずつと小額であった。格付けはBBB+(R&I)格であり、クーポンは5年債が0.24%でJR東日本の10年債を上回り、7年債が0.4%でJR東日本の20年債を上回る。購入できた投資家は決して多くないだろうが、高利回り債の確保ということになる。もっとも、発行体は自動車用の伝動ベルトやコンベアベルト等のメーカーであり、景気の影響を受ける発行体であることは否めない。十分な信用分析を経て投資判断を行いたい。

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