国内起債市場を斬る 起債評価:1/30~2/3

この週も、引続き起債市場の動きは乏しい。もっとも条件決定から募集に至る案件がほとんど見られないだけで、2月に入ってからの起債シーズンに向けて、様々な案件の仕込みがはじまっているのは聞こえてくる。まずは、財投機関債から高速道路運営会社債といった公的セクターから動きがはじまり、続いて、鉄道運営会社債やメーカー、小売といった業種で、大規模な社債募集が複数準備されているようだ。

あくまでも水面下での動きがさかんな起債市場において唯一募集されたのが、国際協力機構の20年物財投機関債である。発行額は50億円と小額であり、各債券の金額は1,000万円であるから、最大で500単位に分割が可能である。クーポンは0.744%で、第159回20年国債対比で+5.5bpのスプレッドで条件決定されている。取得した格付けはR&IのAA+格及びS&PのA+格で、いずれも日本国債と同じ水準である。つまり、国際協力機構の業務内容が日本国政府と密接不可分であり、同等の信用力を有すると評価されているのである。

調達した資金の使途は、“開発途上地域の経済・社会の開発、日本及び国際経済社会の健全な発展に用いられ、地球全体の課題解決に繋がる”だけでなく、“事業の選定・実施・評価の透明性・公正性が高く、国際経済社会の健全な発展という目的のために投資資金が使用されている事、その成果をしっかりと確認できる”と説明されており、投資家はESG投資の一環として投資に取り組むことが出来るとしている。

更に、国際資本市場協会(国際協力機構のHPには“国債資本市場協会”という誤記も見られるが)が定義するソーシャルボンドとしての特性に従うものであることを外部レビューの担当である日本総合研究所によって確認されており、セカンドオピニオンを取得している。そのため、国際協力機構債は社会貢献に資するものとして評価されることになる。日本総研のオピニオンでは、“なお、「ソーシャルボンドとしての JICA 債」の効果を投資家へより分かりやすく提供するためには、調達資金が充当される有償資金協力事業全体のインパクトを取り纏めて公開することを推奨する”としており、1月25日に開催された投資家説明会では有償資金協力事業について詳しく説明が行われている。

投資はあくまでもリターンを追求する行為であるが、それに付加する社会貢献性が上乗せとしてあることは否定されるべきものではない。同様に、投資家はESG投資を行っていることを利回りが芳しくないことの言い訳にしてはならない。あくまでも十分な利回りを獲得することが投資家に課せられた最優先の使命であり、ESG投資は付随的な効能であるべきと考える。主客を逆転させてはならない、という基本の基は忘れてはならないのである。

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