国内起債市場を斬る 起債評価:2/13~2/17

今年度の起債市場は、実質的には、もう一ヶ月もない。徐々に動きはじめた起債市場は、この週後半から一気にフルスロットルで走りはじめたようである。もちろん近年の傾向として、週の後半、特に金曜日に条件決定・募集が集中する。金額面では、三菱UFJフィナンシャルグループが個人投資家向けの劣後債1,500億円を条件決定しており、自然と大きくなっている。

一週間の起債を並べてみると、大きく二つの特徴が見えて来る。まず、一つ目が100億円以下の小額の起債が、起債本数を稼いでいることである。HISの10年債50億円は、7年債150億円との二本立てであるが、1回号で50億円の起債は小さい。歴史的には30億円といった起債もあったが、一般的には、50億円がほぼ最低金額といったところだろう。そもそも、旅行会社で10年債というのは、年限が長過ぎて投資家が集まり難いのではないか。日本の公募社債の歴史では小売と不動産が破綻の代表例になっているが、旅行会社は倒産の多い業種である。もっとも社債を出す大規模な旅行会社は珍しく、倒産しているのは小規模な業者ばかりになっている。横浜高速道路の10年債60億円も、小額募集である。

一方、ちょうど100億円の起債は、ユニーファミリーマートホールディングスの7年債、三井不動産の20年債、セントラル硝子の7年債、リコーリースの3年債及び5年債、協和エクシオの5年債、伊藤園の7年債、JR西日本の10年債及び30年債と本数が多い。複数本立ての募集に際しての片方が100億円というのならまだ良いが、100億円の1回号のみの募集というのは、この時期の多くの起債募集が重なる中では埋没してしまいかねない。

二つ目の特徴が、JCR1社のみからの格付け取得が散見されることであろう。HISの7年債及び10年債はA-格、横浜高速道路10年債はA+格、ユニーファミリーマートホールディングスの5年債及び7年債はA+格、セントラル硝子の7年債はA-格、リコーリースの3年債及び5年債はAA-格、協和エクシオの5年債はA格といった具合になっている。R&Iの単独格付けを取得した起債が、JR西日本の10年債及び30年債しか見られないことを考えると、明らかに分布に偏りがある。JCRの格付けは、R&I対比で平均1ノッチ弱の格付け格差があるために、「格付けショッピング」の行われている可能性は否定できない。

格付けを比較する観点からは、複数格付けの取得は進んで奨励すべきであり、特に投資家に多様な視点を提供するためには、有意義である。スプリットレーティングになっている場合には、その差に有意義な情報の隠れている可能性が考えられる。発行体は、安易な起債コストの削減を模索するのではなく、資本市場へのフェアーな参加に見合う発行コストと考えるべきだろう。

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