国内起債市場を斬る 起債評価:3/13~3/17

いよいよ年度内の起債も終了となる。大物は既に前週までに出揃ったが、最後には小粒な案件や変わり者が登場するといったのが、毎年のパターンである。実際には、地銀の劣後債が2本、更には、ドンキホーテホールディングスの7年債も募集されている。ドンキホーテホールディングスの7年債については、発行体が稀な小売業者であることに加えて、主幹事証券の構成が常連のSMBC日興証券の他、加わっているのが、岡三証券にクレディスイス証券である。これらの証券が主幹事に入ることは、珍しいと言って良いだろう。発行体との、長い信頼関係のある証券会社が名前を連ねたのであろう。

残りの起債を一気に紹介すると、大王製紙の5年債と東京建物の10年債である。いずれもフリークエントイシュアーではないが、珍しいとは言い難い発行体である。しかし、1週間に募集された銘柄には、一つの共通点が見出せる。すべてが、JCRの1社格付けに基づいて起債されているのである。コンコルディアフィナンシャルグループの劣後債はAA-格で、次にドンキホーテホールディングスがA+格、名古屋銀行の劣後債がA格、東京建物がA-格、大王製紙がBBB+格と、全銘柄が1ノッチで綺麗に並んでいる。

最近の起債状況を見ると、やたらにJCRからの格付け取得が目立っている。3月に挙って募集された社債の格付け取得を見ると、R&IとJCR両社から格付けを取得したディールより、海外系を除いてR&I単独の格付けを取得したものが多く、更に、JCRからのみ格付けを取得したディールが多くなっている。この分布は、やや最近の変化と言って良いようである。

一方で、来年度の起債に関して、JCRからの格付け取得を取り止めるとする都市再生機構のような財投機関も存在している。都市再生機構の場合には、他に、R&IのAA格とムーディーズのA1格を取得しており、わざわざ3社から格付けを取得するまでもないと判断したものと考えられる。しかし、これまでJCRからはAA格を取得しており、もっとも評価の低いムーディーズの格付けを撤回せず、JCRの格付けを撤回したところは注目したい。ムーディーズのA1格は日本国債と同じ格付けということで許容されるのだろうか。一方で、R&Iは日本国債のAA+格から1ノッチ下のAA格で、JCRは日本国債のAAA格から2ノッチ下のAA格というノッチ差を考慮したものだろうか。格付け取得には手数料がかかるため、コスト軽減のためというのは理解できるのだが、なぜJCRの格付けを撤回したのであろうか。もっとも、財投機関に関してR&Iから格付けを取得していない例はなく、お決まりコースとされているのかもしれない。事業差異の格付けとは意味合いが異なるのであろうか。

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