国内起債市場を斬る 起債評価:4/24~5/2

ゴールデンウィーク直前の起債市場は、3月期決算企業の決算発表を横目で見ながらの展開であり、動きは鈍い。募集されたものを見ると、事業債でノジマの3年債と5年債の計150億円二本立て、住友不動産の10年債300億円に加えて、財投機関債で日本政策金融公庫の2年債と5年債の計900億円の2本立てだけである。

ノジマの2本立ては、3年債100億円と5年債50億円の組合せである。初の公募普通社債募集であり、投資家の強い人気を集めたが、格付けはBBB(JCR)格である。日本のクレジット市場の歴史を考えると、小売業の破綻が際立っている。ヤオハンとマイカルの二社の破綻は、投資家保護の面で大きな課題を提示している。他に破綻の相次いだ業種としては、不動産があり、この期間に社債を募集したもう一つの企業が住友不動産であるのは何かを象徴している。最近の小売、特にノジマの属する家電販売業界を考えると、ヤマダ電機等に代表されるロードサイド及び駅前の店舗販売に加え、ヨドバシカメラのようにネット販売に注力する会社も少なくない。ノジマの場合には、横浜に本社を置く立地ために、店舗網は関東を中心とする。競合関係が強く、家電量販店では業界6位の位置付けである。ネット通販にも注力し、“日本最大級のデジタル家電通販”と自ら呼称しているが、まさにヨドバシカメラやビックカメラ、更にはアマゾンや楽天といったネット通販業者と競合している。それらの陰ではノジマオンラインは現段階では埋もれている。近年、ニフティを傘下に収めているが、既にかつてのニフティサーブが有していた独占的なポジションにはなく、単なるインターネット接続サービスに成り下がっているために、信用力のサポート材料にはならないだろう。唯一の救いは、起債が3年債及び5年債と短い年限であったことだろう。

住友不動産については、歴史的に引受証券泣かせの発行体である。業界で圧倒的な地位を有していた東京電力やソニーといった発行体も引受証券を泣かせることが多かったが、それらと異なり、住友不動・オリックスはその二大巨頭に代表されたフリークエントイシューアーであり、単独引受案件として投資家にとってイメージの悪さは変わらない。かつては外資系証券が、リーグテーブルに名を残すために血を出して頂いたマンデートだった時代もあったほどである。今回の起債は大和証券の単独引受であるが、利回りの設定がやや割高感がある中で、300億円とまとまった金額であることから売行きはスローになった。100億円であれば、それほど苦戦しなかったのだろうが、300億はさすがに「荷もたれ感を否定できない」と言ったところであろう。

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