国内起債市場を斬る 起債評価:5/8~5/12

例年、起債市場の休み明けに動き出す銘柄は、先ず電力・銀行・財投機関といったところがトップバッターであり、その後、ノンバンクや鉄道が動きだし、おもむろにメーカーが重い腰を上げるというのがお決まりのイメージである。ゴールデンウィーク明けの起債市場では、まず、電力と財投機関が動いた。地方公共団体金融機構については、厳密な意味では財投機関ではないが、かつての財投機関債発行団体である公営企業金融公庫の債権債務を継承していることから、出資関係や財政投融資計画等の関係から同等には扱えないものの、一種の公共債とすることに問題はないであろう。しかも、政府予算と一体として国会に付議される地方債計画においては、地方公共団体金融機構からの調達額も明記されているのである。まお、地方に属さない各高速道路運営会社も厳密な形式では、社債であるものの、財投機関である日本高速道路保有・債務返済機構による重畳的債務引受特約が付されているために、準財投機関とすることもあながち誤りではない。地方公共団体金融機構にしても、高速道路運営会社にしても、格付会社からの評価は、一部の財投機関より高水準で日本国債と同程度の信用力を有するとされている。

財投機関等でさっそく動いたのは、地方公共団体金融機構、日本高速道路保有・債務返済機構、住宅金融支援機構の3団体である。ややいつもと異なるのは、年限設定だろうか。地方公共団体金融機構は10年債のみで、日本高速道路保有・債務返済機構は20年債のみ、住宅金融支援機構は2年限で募集したものの、5年債と10年債だけであった。それでも3団体で計800億円の募集であるから、起債市場から資金を吸い上げるのに貢献している。もっともマイナス利回りの国債に見向きもしない投資家が、これら一般債に対する投資ニーズを根強く有しており、消化に対する懸念は小さい。

電力債という意味では、厳密な意味で一般担保の付いたものは四国電力の10年債と20年債各100億円のみであるが、電源開発の10年債も準電力債と位置付けて良いだろう。電源開発の事業内容が、電力会社への発電卸売りであることだけでなく、かつては電源開発促進法によって一般担保付の債権発行が可能とされていたのである。それが株式会社化され、民営化されたものである。現在でも、同社によって発行される社債は、無担保債であり各社債の金額が1億円であるものの、社債管理者が設定されている。今回の第49回債では、みずほ銀行が社債管理者に就任しており、年間200万円の報酬を受けることになっている。しかし、純資産維持条項や利益維持条項等の典型的なセンサー条項は付されていないために、社債管理者が果たすべき機能は多くない。社債管理者の調査権限として、「社債管理者は、社債管理者の権限を行使し、または義務を履行するために必要であると判断したときは、当会社並びに当会社の連結子会社及び持分法適用会社の事業、経理、帳簿書類等に関する資料または報告書の提出を当会社に請求し、または自らこれらにつき調査することができる。」との文言が要項に記載されているものの、そもそも“社債管理者の権限”の内容が不明であるために、実効性は期待できない。

コメントは受け付けていません。