国内起債市場を斬る 起債評価:5/15~5/19

ようやく起債市場に盛り上がりが出始めた。週前半の動きは見られなかったものの、水曜日と金曜日に多くの案件が条件決定している。しかも、なか日、木曜日には、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が財投機関債を4本立て計610億円募集しており、募集総額は大きくなっている。もっとも翌週は、電力以外にもトヨタ自動車や東京地下鉄の募集が予定されており、より金額は大きく積み上がることだろう。

メーカーや公共セクターの起債が目立つ中で、金曜日に住友商事と丸井グループが社債を募集している。総合商社と小売に分かれているように見えるが、住友商事の子会社にはスーパーのサミットやドラッグストアのトモズがあり、小売の要素も考慮しなければならない。既に、三菱商事傘下のローソンや伊藤忠商事傘下のファミリーマートのように、コンビニは総合商社の傘下に入っており、総合商社は小売の要素も無視できなくなっているのである。一方、丸井グループは“赤いカード”をエポスカードに変更したものの、未だに小売プラスカード事業であり、単なる小売ではない。結局のところ、単純な業種分類が意味を持たないと言っても過言ではない。

住友商事の10年債は国債対比+28bpsの0.325%クーポンで条件決定されており、起債頻度が少ないこともあって、順調に消化された模様である。大手商社の事業内容は多岐に渡っており容易に全貌は掴めず、また、時に資源関連や不透明な取引関連で巨額損失を被る可能性もあるのだが、事業規模の大きさからよほどの損失でなければ、事業本体に影響を及ぼす可能性は小さく、メイナバンク等との関係を考えると、社債の元利金支払に対する懸念は小さいと言って良いだろう。格付けは、R&IのA+格とムーディーズのBaa1格を取得している。近年はムーディーズの格付け付与先が激減しており、Baa1格の相対的位置関係は不明瞭である。公的支援のない事業会社で今月の起債の中からムーディーズの格付け取得例を見ると、JFEホールディングスのBaa2格しかない。

丸井グループの社債は5年債と7年債各100億円が募集されている。歴史的に同社の起債は野村證券が主幹事を務める。格付けはR&IのA-格で住友商事より2ノッチ低いが、額にそのことで、クーポンは5年債0.19%、7年債0.3%といった水準になっている。小売環境が大きく改善しているとは見えないが、大都市圏のターミナル駅周辺に出店するという丸井の戦略は、人口減少社会の中においても、相対的に影響を受け難くいことが期待される。いずれの年限も順調に消化されたようであり、年度初めの投資家は社債に対して強いニーズを持っているようである。

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