国内起債市場を斬る 起債評価:6/19~6/23

3月期決算企業の株主総会シーズンである。以前ほどの開催日集中はないが、1週間程度の期間でこぞって開催するものだから、社債市場も実質的にお休みとなる。既に決算短信で情報が開示され、有価証券報告書も提出されているのだから、決算内容に新規のものはないが、株主総会時に示される経営計画や人事等があり、社債の募集は控えられている。また、直ぐに7月に入って第2四半期の起債シーズンになるのだから、このタイミングに無理して起債しないという事情もあるのだろう。3月期決算以外の企業にとっては絶好な社債募集のチャンスであるが、あまり利用する企業は多くない。27日頃にイオンモールが社債募集を予定しているのは、適切だろう。

こうした状況で動けるのは、必然的に公的セクターが中心となる。日本高速道路保有・債務返済機構と国際協力機構とが財投機関債を募集している。前者は30年債100億円で、後者は10年債と20年債各100億円である。日本高速道路保有・債務返済機構は、財投機関債の募集を定例で行っており、時に利子一括払いやディープディスカウント等起債に工夫も行う発行体である。クーポンは0.895%と1%に達していないが、国債対比のスプレッドは+8.6bpsとされており、今月上旬に募集された都市再生機構の同対比+14bpsよりタイトな水準になっている。

国際協力機構は、ソーシャルボンドの認証を得ての起債である。既に前年度から同様の取組みを進めており、DealWatchから2016年度のBond Issuer of the Yearを受賞している。確かに、国際協力機構のミッションを考えると、ソーシャルボンド( Social impact bond:社会貢献債)の求める内容に、事業内容がもっとも近い発行体かもしれない。国際協力機構の財投機関債は、国際資本市場協会の定めた定義と要件を満たしているとされており、具体的には、資金が社会開発に資する事業に用いられることで、対象事業としては、基礎インフラ開発・社会サービスへのアクセス改善・住宅支援・雇用創出・食糧安全保障・社会経済開発が挙げられ、そのターゲット層としては、貧困ラインを下回る所得層・社会における少数派グループ・災害等の影響による脆弱層・障がい者・移民及び難民・未教育者や未就業者とされている。また、グリーンボンド(Green Bond)原則と同じ情報開示の要件が示されている。既に、昨年度にはフランス電力公社がサムライ債でグリーンボンドを募集したり、野村総合研究所が事業会社としては初めてのグリーンボンドを募集したりしており、徐々にこういった環境や事業内容等に配慮した起債が増えて来ている。投資家により社会貢献姿勢を求める方向に向かいつつある中では、今後はよりこのような発行体の取組みが注目を集めるようになる可能性は高い。

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