国内起債市場を斬る 起債評価:8/7~8/11

甲子園(全国高校野球選手権大会)が始まり、起債市場の動きは鈍い。例年の8月上旬に見られる景色である。8月下旬以降の起債観測は上がりはじめており、9月中旬までの上期の起債市場の姿が見えはじめてはいるが、電力やノンバンクのように機動力を有する業態は急に動くこともある。発行登録制度のメリットであり、市場環境に応じて柔軟にプライシングできるのも強みである。日本の周辺を見回すと北朝鮮情勢に不穏な動きがあり、円高から株安となっているものの、債券市場に関しては静観状態になっている。確かに円高株安から金利低下へと至る道筋は、日銀によるイールドカーブコントロールで封じられており、むしろ北朝鮮情勢が落ち着いた場合に、株高から金利が上昇するリスクを念頭に置いておきたい。

募集された起債案件の一つは、地方公共団体金融機構の10年債である。月によっては20年債等他の年限も募集するのであるが、今月は10年債200億円のみであった。前週に募集された鉄道建設・運輸施設整備支援機構や住宅金融支援機構の10年債は0.23%クーポンであったが、地方公共団体金融機構の10年債は0.225%クーポンで募集されている。国債の値動きを見ると、前者の財投機関債が募集された4日よりも地方公共団体金融機構債の募集された8日は、0.5bp程度の金利上昇が見られており、住宅金融支援機構債等よりも国債対比スプレッドはタイトになっている。7月債を見ても、同日に募集された住宅金融支援機構債より地方公共団体金融機構は1bpタイトなスプレッドで条件決定されており、8月も同様の関係が維持されていたようである。

民間会社で募集されたのは、積水ハウスの劣後債である。最終償還は60年後であるが、当初5年の期限前償還条項が付されている。いわゆる早期償還を前提として5年債と評価すれば、スワップレート対比+70bpsの0.81%クーポンである。しかし、期限前償還するかしないかは発行体のオプションであり、投資家は発行体に対してコールオプションを売っているのであって、そのプレミアムが利回りの嵩上げに用いられているのである。加えて、ハイブリッド証券に分類される劣後債であり、発行体の破綻時には、通常の債券や借入れよりも劣後した回収順位となる。こうした劣後プレミアムも、発行条件に乗せられていると言って良い。それらも含めた、スワップレート対比+70bpのスプレッドなのである。

5年経過後は、6ヶ月円ライボー対比+170bpsの変動金利になるが、そもそもライボー自身が数年後にはなくなる可能性があり、この債券の利息支払方法の記述には、注意が必要である。具体的には、“利率基準日に、6ヶ月ユーロ円ライボーがロイター3750頁に表示されない場合又はロイター3750頁が利用不能となった場合には、当社は利率決定日に利率照会銀行の東京の主たる店舗に対し、利率基準日のロンドン時間午前11時現在にロンドン銀行間市場においてそれらの利率照会銀行が提示していたロンドンの主要銀行に対する円の6ヶ月預金のオファード・レートの提示を求め、その平均値を当該利息計算期間に適用される6ヶ月ユーロ円ライボーとする。”となっている。

コメントは受け付けていません。