国内起債市場を斬る 起債評価:10/2~10/6

下期がスタートした。金利先高感が見られない中では、慌てて起債しようとする発行体は少ないだろう。一方、投資家はなるべく早く投資を実行して下期のインカムを確保したい。何しろ期間対応で利息収入が入って来るのだし、預金においていると銀行との関係次第ではマイナス金利となっていることもある。環境としては、週初めの日銀短観によって景況感を確認するというのが古典的な投資家の思考だろうが、足元はそんな黴(かび)の生えたような手法は好まれない。何しろ市中に出回っている国債残高の約4割を日銀が保有しているのだから、企業の持つ景況感や業績見通しよりも、日銀のオペ動向の方が金利に与える影響は大きい。また、財務省による長期国債の入札も、よほどの波乱がない限り、材料視はされなくなりつつある。淡々と、社債等の募集が始まっている。

出足の早いおきまりの発行体と言えば、電力、公的機関、ノンバンクといったところだろうか。銀行は二番手グループで、その後にメーカーが登場するというのが、典型的な起債の流れである。まず10月5日に募集されたのが、阪神高速道路の3年債に、中国電力の5年債及び7年債、四国電力の20年債といった顔触れである。その後、金曜日の6日には、首都高速道路の5年債、日本政策投資銀行の3年債・5年債・10年債、地方公共団体金融機構の20年債及び30年債、住宅金融支援機構の5年債・10年債・20年債という公共セクターの他に、電源開発が10年債、中部電力が10年債及び2年債を募集しており、更には、NTTファイナンスが5年債及び15年債とジャックスが7年債とノンバンクも登場している。その他に、メーカーの日揮が3年債と5年債を早々と募集している。

全体的には、中期債の売行きが良くない傾向にある。国債対比のスプレッドプライシングが機能しないためでもあるが、投資家の目線やセカンダリーの実勢から乖離した場合には、容易に消化できていない。中国電力の5年債及び7年債が典型例であろう。一方、希少価値のある日揮の社債は両年限とも問題なく消火されたようである。10年以上の年限については、概ね順調に消化されているものが多い。利回りの絶対水準を意識した投資家が多いだけでなく、国債利回りがプラスにあるため、スプレッドプライシングが機能しており、条件の透明性が高いためと評価できるだろう。中期債の売れ行き不振は、日銀による金融緩和の副作用であるとして良いだろう。なお、NTTファイナンスの起債は、中期の5年だけでなく、超長期の15年債も苦戦したようである。これは、ノンバンクにとって15年という年限が長過ぎるとされる可能性が高いことに加え、投資家の目線よりタイトなスプレッドであったようだ。絶対水準を欲しがる投資家は多いものの、15年の0.489%は必ずしも魅力的には映らなかったのである。

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