国内起債市場を斬る 起債評価:10/10~10/13

下期の起債市場は、予想通り動きが鈍い。スタートダッシュ感がほとんどない。前の週に財投機関債や高速道路会社がまとまった金額を募集しており、この週も地方公共団体金融機構の2週続けての募集や、西日本高速道路の募集が行われているものの、新味は乏しい。ただし、前週は電力と小額ながらメーカーの社債募集があったのに対し、この週はノンバンクや銀行が目立つ展開となった。

前週(10月2日の週)もジャックスの7年債やNTTファイナンスの5年債及び15年債で計350億円の募集が見られていた。年限は超長期で珍しい部類に入り、売行きは必ずしも良くはなかったようである。しかし、この週は、ノンバンクの起債は、東京センチュリーの3年債・5年債・7年債の計300億円、トヨタファイナンスの3年債・5年債・10年債の計550億円と二つの発行体だけで、850億円が募集されている。前週のような年限の負担感はない。トヨタファイナンスに至っては、3年債と5年債は増額したものの、10年債は増額を見送っている。十分な金額を中期年限で消化できたためもあるが、無理な超長期の募集には与(くみ)していない。国債と同程度かそれよりも高い格付けでありながら、国債対比+19.5bpsというスプレッドでプライシングされている。神戸製鋼所によるデータの改竄・偽装でメーカー一般の信頼性が損なわれたとは言え、トヨタ自動車傘下のファイナンス会社に対する信頼は高い。

もう一つの目立った発行体が銀行である。名古屋銀行は、自己資本比率規制に対応した期限前償還条項付10年劣後債を募集しており、セブン銀行は10年の普通社債を募集している。名古屋銀行債は劣後債ということもあって格付けはJCRのA格であり、一方のセブン銀行はR&IのAA格及びS&PのA+格を取得している。S&Pの格付けで見れば、日本国債と同水準なのである。名古屋銀行債の当初5年の固定クーポンは0.48%であり、セブン銀行債の利率は0.39%である。銀行の期限付劣後債は日本国内ではコールされなかった例はまだないので、5年債と考えれば、高い利回りである。格付水準や劣後プレミアムをどう評価するか、また、地域金融機関に対する金融庁の監督姿勢をどう見込むかで、投資判断を悩むところではある。一方のセブン銀行は、セブンイレブン店内のATM展開を中心に手数料収入で収益を挙げるモデルを確立しており、国債対比+32bpsのスプレッドは格付け対比では魅力的に見える水準である。国債金利が上昇しないと思うならば、0.39%の利回りも評価できる。

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