国内起債市場を斬る 起債評価:10/16~10/20

地方公共団体金融機構がFLIPに基づく債券を計9本募集する一方、三菱UFJフィナンシャルグループが永久劣後債を2本計3,200億円募集しており、本数・金額ともに大きな数字となっている。とは言うものの、必ずしも起債ラッシュという感じではない。他の大型案件という意味では、東京電力パワーグリッドの計1,000億円があり、年限では日本高速道路保有・債務返済機構が40年債を通常の利払形態のものと満期時一括利払のものとで計400億円を募集している。盛り上がりに欠けるのは、メーカーによる起債が荏原製作所の5年債100億円しか見られないからかもしれない。

業態として目だったのは、電力であろう。前述の東京電力パワーグリッドは8月に引続いて、5年債と10年債の二本立てである。金額は各々500億円である。同社が起債市場に登場して半年あまりであるが、年限と金額の変遷を見るのも面白い。長期化という一つの思想が明確に感じられるのである。3月債は3年債400億円と5年債500億円で、6月債は5年債500億円と7年債200億円と金額は減少したものの、7年債へと年限を伸ばしている。続く8月債は5年債700億円と10年債300億円と初の10年債を募集し、今回は5年債と10年債が500億円ずつである。年限を募集金額で加重平均すると、もっとも長くなっているのである。

同社の債券は、格付けがJCRのA格に対してR&IはBBB格と、他の電力会社に増して、スプリットレーティングが著しい。一部の投資家は依然として購入対象にしていないとされるが、5年債の0.46%クーポンは、この週に募集された三菱UFJリースの0.2%や荏原製作所の0.18%、初めて公募社債を募集した日本土地建物の0.3%を大きく上回る水準である。特に、日本土地建物の格付けはJCRのA-格であり、初物という要素を抜きにしても電力債のプレミアムは大きい。東京電力パワーグリッドの計1,000億円の募集は、人気があったようである。

一方、7年債300億円を0.32%で募集した関西電力と5年債100億円を0.19%で募集した九州電力は、売行きが良くなかったようである。東京電力パワーグリッド債と比較すると、利回りが乏しく見えるのである。しかも、関西電力も九州電力も原発依存度の高い電力であり、再稼動中の川内や高浜で何らかのトラブルが生じた場合は、収益構造に大きな悪影響が出て来るという脆弱な構造にある。全般的に中期年限の電力債は、鬼門である可能性が高い。

コメントは受け付けていません。