国内起債市場を斬る 起債評価:10/30~11/2

決算発表のピークを迎えると、民間企業の起債はほとんど見られなくなる。前年を振り返っても、10月25日にノンバンク(三井住友ファイナンス&リース;5年100億、クレディセゾン;5年100億)の起債が見られた後、次に11月1日に小売(イオンモール;7年250億、20年100億)の起債があって、その後は、16日にノンバンク(ポケットカード;5年100億)と、民間企業(日本電産;3年500億、オークマ5年50億、三井金;5年100億)の起債再開となり、電力やメーカーの起債が動き出したのは18日であった。昨年の11月18日は金曜日であり、今年で言えば17日に相当する。今年は、電力の起債観測が早々に上がっていることもあって、昨年のような月後半(公共セクターとして22日に東京ガス、四国電力、Jパワー、25日北陸電力)になってからといった感じとはなりそうにないが、金利先高感が見られないことから、起債全般の動きは鈍い。特に、10月末の金融政策決定会合においても、現行の金融緩和の継続が強く示され、片岡委員から一歩進めた緩和強化の具体的な提案な手段については提出されなかったこともあって、先行きの金利は横ばいからやや低下といった諦めが市場全体を覆っている。

こうした環境下では、起債観測も具体的な債券の募集も活発には見られなくなる。一方、民間企業にとって、このタイミングで動きにくいスケジュールなのは3月期や12月期決算の上場企業であり、それ以外の決算期を採用している企業にとっては、絶好のチャンスであろう。とは言え、非上場企業や小売等で決算期が異なるサイクルを採用する社債発行企業は決して多くない。結果として、公共セクターの発行が目立つ傾向にある。昨年の記録を見ると、10月25日に住宅金融支援機構の財投機関債が募集され、その後、11月5日には鉄道建設・運輸施設整備支援機構の財投機関債と地方公共団体金融機構債券が募集され、16日には都市再生機構の財投機関債が募集されている。民間企業の社債よりも、動きが多かったのである。

前週に募集されたのは中日本高速道路の債券のみである。分類上は株式会社の発行する債券であり、社債に区分される。元本に対する政府保証が付されてもおらず、財政投融資計画に基づく起債でないことから、社債としか処理しようもなく、実際に、日本証券業協会の発表している公社債店頭売買参考統計値においては、社債の欄に掲載される。しかし、区分と信用力の評価は異なる。高速道路各社の発行する債券は、財政投融資計画に直接基づくものではない。しかし、各社の社債には、公共セクターを中心によく見られる一般担保条項が付されているだけでなく、日本高速道路保有・債務返済機構による債務の重畳的引受条項が付されている。平たく言えば、いずれ財投機関である日本高速道路保有・債務返済機構の債務となるものである。

したがって、高速道路債の保有者は、発行体である高速道路運営会社の信用力を見るだけでなく、その債務が日本高速道路保有・債務返済機構へどう移管されるかを注意し、移管された後は日本高速道路保有・債務返済機構の信用力を見ることになるのである。そういう意味では、高速道路会社の社債は、社債でありながら準公共債として捉えるべきなのである。格付けが、R&IのAA+格・JCRのAAA格・ムーディーズのA1格と日本国債と同水準であることからも、準公共債としての位置付けを示しているものと言って良いだろう。

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