国内起債市場を斬る 起債評価:11/13~11/17

この週も起債市場の動きは、多くない。条件決定した案件の顔触れを見ると、電力、鉄道、公共セクターでほとんどであり、それに総合商社の丸紅を加えると、地方債やサムライ債を除いた全てである。年内の募集期間が残り一月を切っているために、起債観測の上がっている数はかなりあるのだが、募集が本格化するのはもう少し先である。

電力債では、四国電力が10年債100億円、九州電力が10年債200億円及び20年債100億円、東北電力が5年債100億円及び10年債200億円と計700億円が募集されている。前週までと比べて変化しているのが、電力債の売行きが良好になったことだろう。今月に入ってのこれまでを見ると、北陸電力の15年債や電源開発の10年債の売行きは不調であった。一方、この週に募集されたのは、東北電力の20年債を除くと、すべて5年債と10年債であり、前月までの状況を考えると売行きが懸念される年限である。ところが、この週に募集されたものは、いずれも良好な消化状態となっている。募集された10年債の国債対比スプレッドは+33~37bpsの水準であり、夏場よりも少し乗っている。流通市場の実勢に配慮したことが評価されたものといえる。

一方で、相変わらず超長期債の社債募集が見られる。前述の九州電力20年債以外に、丸紅と南海電気鉄道が20年債各100億円を募集した他、JR西日本が30年債を200億円募集している。このうち、売行きが良好であったのは、南海電気鉄道の20年債とJR西日本の30年債で、丸紅の20年債は苦戦した模様である。理由は簡単である。幾ら大手総合商社の一角であっても、丸紅のこの先20年を安全と見通せない点が大きい。約30年前に遡れば、商社冬の時代、氷河期と言われて、商社不要論が言われた。また、それ以外にも、同業等で貴金属取引や海外投資において巨額の損失が明るみになった事例が少なくない。バブルの崩壊や不動産価格の下落による影響も大きく受けている。つまり、総合商社は鉄道会社と異なって、超長期債の発行体としては一般的に相応しくないのである。

鉄道会社の超長期債を支えるのは、総括原価法に基づく運賃の認可制度である。これは、競争が厳しくなっていると言っても、電力やガスと類似のシステムである。この週の発行体の中でも、南海電気鉄道は格付けが高水準でなくても、今秋の台風上陸の影響(樽井駅~尾崎駅間では単線運転、羽倉崎駅~和歌山市駅・和歌山港駅間は臨時ダイヤで運行、高野線高野下駅~極楽橋駅間は復旧見通しは立っていない。)で、まだ正常に運行できていないのに、地元では問題なく儲かっていると言われている。こうした収益構造を考えると、超長期債の売行きは発行体に左右される要素が少なくない。投資対象を選ぶ際の目線を間違えないようにしておきたい。

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