国内起債市場を斬る 起債評価:11/27~12/1

年内の募集可能日数が残り少なくなると、恒例のように後半の起債シーズンはラッシュ状態になる。しかも、以前は火曜や木曜が起債ラッシュになっていたのだが、近年の債券募集は金曜日に集中する傾向がある。その結果、12月1日は債券募集が集中しており、また、次には8日にも同様の展開になることが予想される。ただし、ラッシュ当日のみに募集があるものではない。発行体によっては、あえて集中日を避けるものもある。ラッシュ当日であると、他の銘柄との比較がより明瞭になる可能性が高いからである。また、知名度や発行条件が劣位にある場合は、ラッシュ当日を避けるのは理にかなっている。

12月1日に条件決定された社債は、12の発行体で本数は26本に上る。このうち一本は東北電力の個人向け社債で、募集期間は週明けからなので外しても、残りの多くが順調な消化状況となったことは特筆に値しよう。銘柄を問わず共通であったのは、日銀オペでの買取りが期待できる3年債と、絶対利回りの確保できる超長期年限の社債に対する人気である。3年債の募集は、ヤフー100億円、あおぞら銀行100億円、大和ハウス工業500億円と計700億円である。特に、大和ハウス工業の場合は、当初400億円程度とされた募集金額が500億円に増額されている。R&IでAA-格及びJCRでAA格という高格付けの大和ハウス工業債は、10年債・20年債とも当初予定を上回る募集金額に増額されている。

超長期債の募集では、東京地下鉄の20年債及び30年債の各100億円、上述の大和ハウス工業の20年債70億円、社債以外では国際協力機構の20年債200億円がある。大和ハウス工業債だけでなく、国際協力機構の20年債も当初予定から増額されており、利回りに対する根強いニーズが確認できる。中でも、唯一の30年債となった東京地下鉄は、国債対比+22.5bpのスプレッドでクーポンが1.065%と大台に乗ったこともあって、特に強いニーズを集めることとなった模様である。

ほとんどの社債が順調に消化されている中で、一際、不調に見えたのが、マツダの7年債200億円及び10年債100億円である。そもそも、起債観測が上って来たのがこの週に入って来てからで、明らかに準備不足であり、7年債の0.3%クーポン、10年債の国債対比+38bpsのスプレッドで0.42%クーポンは、JCRのA-格という評価のマツダに関しては割高に見えたのである。ちなみに、この週に募集された他の10年債の国債対比スプレッドを見ると、AA(JCR)格の大和ハウス工業が+29bps、同じ格付けのトヨタ紡織が同じく+29bps、AA-(JCR)格の新日鐵住金が+31bps、同じ格付けの三菱倉庫は+30bps、A+(JCR)格の日本精工が+34bpsであった。起債ラッシュでも売れない社債には、それなりの理由があるのである。

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