国内起債市場を斬る 起債評価:12/4~12/8

前週同様、今週も金曜日の案件集中が激しい。もっとも募集に適した期間が残り少ないために、火曜日からそこそこの金額での募集が続いていたのである。火曜日は三井住友海上火災保険の劣後債が2本で計1,300億円、水曜日は公的セクターばかりで、計10本で1,480億円、木曜日は少なめで個人投資家向けの条件決定を含め計600億円。そして、金曜日が個人投資家向けの条件決定を含め22本計3,400億円に上ったのである。

目立った業種としては、まず電力債だろうか。北海道電力と九州電力の個人投資家向けを含めると、7本計1,500億円に上る。中でも、東京電力パワーグリッドが12年債と超長期ゾーンに足を踏み込んだのが注目される。相対的にスプレッドの乗ることが多い電力債は、概ね順調に消化される傾向にあるが、この週に条件決定された中では九州電力の5年債が必ずしも順調に消化されなかったようだ。他の案件が多く投入される中では、見劣りする状況であった。

起債シーズンのほぼ最後というタイミングでの条件決定であったが、九州電力の5年債以外にも不調な案件が少なくない。特に、利回りの高い超長期債は好調な案件が多かったものの、中期から長期はやや苦戦した案件目だった。レンゴーの7年債及び10年債は50億円ずつという小額の募集であったが、格付けで利回りが足りないイメージだったようである。同様に、ホンダファイナンスの5年債も、3年債が日銀オペ見合いで売れたのに対して、正面からプライシングした5年債の売行きは不調であった。なお、グリーンボンドを売りにして募集された戸田建設の5年債も、必ず塩順調な消化状況とはならなかったようだ。グリーンボンドだからといって、割高なプライシングの社債が売れるということではないようだ。

この週で最も売れたのは、やはり東京電力パワーグリッドの12年債だろう。クーポンが0.94%とほぼ1%近い。この週に募集された中では、三井住友海上火災保険の10年後償還可能60年劣後債は当初1.17%クーポンであり、新関西国際空港の30年債が1.065%クーポン、更には、日本高速道路保有・債務返済機構の40年債が通常債1.249%で、利子一括払い債1.439%で募集されているが、東電パワーグリッドは12年債と短いのが人気に要因だったようである。信用リスクの評価は、特にR&IのBBB格だけを見ると難しくなってしまうが、購入した投資家は何が起こっても電力グループでデフォルトは起ないと信じているのではないか。

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