国内起債市場を斬る 起債評価:11/5~11/9

引続き、3月期決算企業の決算発表があるため、民間企業の起債は停滞している。それでも、月初めの10年長期国債の入札を受けて、地方債や財投機関債等の募集は淡々と進んでいる。11月頭の起債が閑散となるのは、例年並みの季節性でしかない。しかし、冷静に12月末までのカレンダーを考えると、今月中旬以降で社債等の募集可能な営業日は、年内発行には残り1ヶ月ほどしかない。そろそろ起債観測も、大型案件やメーカー等動きの遅い発行体の名前がチラホラと見えて来ているようだ。

 

必然的に、この週の起債の中心は公的セクターとなる。募集された顔触れを見ると、住宅金融支援機構、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、都市再生機構といった財投機関に加ええ、地方公共団体金融機構となる。いずれもR&Iの格付けがAA+格乃至AA格と高水準であり、政府からのサポートが実質的に期待できる発行体である。したがって、募集された年限も、超長期にまで及ぶものが珍しくない。

 

募集日が火曜日と金曜日とに分散しているが、日本銀行によるイールドカーブコントロールで金利水準が大きく変動していないから、クーポン水準別にこの週の公的セクターの起債を並べてみよう。5年債は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が0.03%で、住宅金融支援機構が0.02%となるR&Iによる1ノッチの格付け差が影響しているというほどの物でもない。地方公共団体金融機構に関しては、地方公共団体や関連共済組合等投資家が多いのである。なお、今月の鉄道建設・運輸施設整備支援機構はグリーンボンドではないが、ノンリコースでなく一般財源が返済原資となる場合には、特定回号のみグリーンボンド認定を受けることが適切なのだろうか。単に、発行体と購入者の自己満足に過ぎないのではないか。

 

10年債は、住宅金融支援機構と鉄道建設・運輸施設整備支援機構の0.289%、地方公共団体金融機構の0.279%である。前者が国債対比+16bpsとされ、後者が同対比+15bpsとされているから、ベースとなる国債利回りは火曜日と金曜日とでほぼ同水準にあったということである。5年債と同様に、地方公共団体金融機構の債券に対するニーズは強い。

 

超長期ゾーンの募集は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の15年債0.515%クーポン、住宅金融支援機構の30年債1.026%クーポンに加えて、都市再生機構が20年債0.716%クーポン及び40年債1.246%クーポンを募集している。地方債では40年債が募集されていないために、40年債の購入機会は限定的である。もっとも、かつて民営化の検討も一部で囁かれた都市再生機構の40年債の信用力をどう判断するかは、容易ではないかもしれない。なお、かつては政府系機関の債券については、後に民営化されても、償還までは公的機関による債券としての性質を失わないように法律で手当されていたが、将来における対応に関しては、保障されていないのである。

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