国内起債市場を斬る 起債評価:11/9~11/13

11月に入り徐々に起債市場が動きはじめているものの、まだ、本格稼働という感じではない。あたかも12月中旬までの年内の募集期間ギリギリに向けて、エネルギーを蓄えているかのようだ。起債観測は、様々なメーカーや交通関連など多くの企業から上がっているが、新型コロナウイルス感染症の動きが活発になりつつある状況に鑑みると、旅行や小売、サービスに関連する発行体は今後も苦しまざるを得ないのかもしれない。札幌を中心とした北海道の感染者増に加えて、当初は感染者がないと豪語していた岩手県でも複数の飲食店でクラスターが発生しており、予断を許さない展開となっている。寒さや乾燥でウイルスが活性化し、飛沫の距離、範囲共に延びていくという。気温の低下から換気が不十分になり、これが感染拡大の要因となっている可能性が高い。もしそうであれば、本格的な寒波の到来による首都圏や中部・関西の気温低下による状況の悪化が懸念される。欧米の感染拡大を対岸の火事と見ることは極めて危険であり、未だに日本の感染者が少ない要因は、解明されていないのも、不気味だ。

徐々に動きはじめた起債市場では、住宅金融支援機構の3本立て財投機関債以外には、日銀オペ見合いの年限である3年債及び5年債の社債のみが募集されている。発行体は高格付けと低格付けとの両極であったと言って良いだろう。トヨタグループに属する自動車部品メーカーであるデンソーは、R&IのAA+格と日本国債並みの水準の格付けを得ている発行体である。募集した3年債は0.001%クーポンであるが、単価が100.003円のオーバーパーであって、利回りは0%である。それでも同年限の国債よりは高い利回りなのである。久しぶりの希少性も加わって、500億円の募集でも何ら支障がない。

もう一方のグリーは、BBB(R&I)格を取得しているネット企業である。元来はSNSの運営会社とされていたが、現状はネットゲームに注力しているようである。新型コロナウイルス感染症の拡大で在宅を強いられている人が多い中で、売上の拡大が確実視できる強みはあるものの、流行り廃りの激しい業界であって、短期間で大きく業績や収益状況の変化する可能性も高い。そういう意味では、3年債と5年債という組み合わせは、ギリギリの年限ではないか。しかも、募集金額は3年債50億円に対して5年債は30億円と、公募普通社債では見ることが稀な少額発行である。3年債の0.51%はデンソーと比べると500倍以上の高いクーポンであり、5年債も0.85%クーポンと十分に高い水準であるが、発行体の先行きが懸念からか、なかなか投資家の購入意欲を掻き立てるものではない。それが、BBB格という格付けであり、業種としての特性にも結び付いた見方であろう。今回が第1回債及び第2回債という初の公募普通社債であり、投資先の分散という意味では購入を考えても良いとする投資家はあっただろう。

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