国内起債市場を斬る 起債評価:5/24~5/28

3月期決算企業の決算発表を越え、電力と財投機関といった早駆けの得意な発行体に続いて、ようやく社債等がまとまって募集されるようになって来た。特に、業種面での偏りがなくなり、幅広い業態からの募集が見られた週であった。業種を列挙してみると、高速道路、銀行、証券、建設、ノンバンク、化学、鉄道、通信、ガスといった顔触れである。金曜日に多くの社債募集が集中するのは、やむを得ないところでもあるが、募集日をもう少し工夫すれば良いのではと、何時ものことながら思わざるを得ない。

この週の起債では、複数本立ての起債が目に付いた。二本立ての起債としては、大和証券グループ本社の5年債及び7年債各150億円、キリンホールディングスの5年債400億円及び7年債300億円、東急の3年債及び20年債各100億円である。東急の起債は、日銀オペ見合いの3年債と鉄道にふさわしい超長期の20年債という組み合わせで、合理的な選択と思える。しかも、3年債はオーバーパー発行で利回りは0%という起債である。残りの2社は、5年債及び7年債と中期年限が主体である。証券会社が中期の起債というのは違和感のないところであるが、飲料メーカーであるキリンホールディングスに関しては、より長い年限も選択できたのではないかとも考えられる。

複数本立て起債としては、三本立て起債の方がより目立ったように感じる。三菱ケミカルホールディングスは5年債200億円・10年債200億円・20年債300億円の計700億円、大和ハウス工業は5年債250億円・10年債150億円・20年債100億円の計500億円、ソフトバンクは5年債350億円・7年債300億円・10年債350億円の計1,000億円、大阪ガスは10年債200億円・20年債100億円・30年債100億円の計400億円と、いずれも大型の起債になっている。しかも、ソフトバンク以外は超長期債を組み込んでいるところが面白い。また、二本立て起債と同様に、5年債が4社で計800億円と多くなっている。基本形は、5年債・10年債・20年債という組み合わせだが、ソフトバンクは20年債でなく7年債とし、大阪ガスは5年債でなく30年債を選択したのは、業種特性によるものと考えればよかろう。

これから株主総会の時期まで、少し起債が増えるものと思われる。引続き、多様な業種が多様な年限で募集することだろう。また、この週はケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人(資産運用会社:ケネディクス不動産投資顧問株式会社)によるソーシャルボンドくらいしかSDGs債の募集は見られなかったが、最近の潮流に乗り、様々な発行体によってグリーンボンドやソーシャルボンドなどが手を変え品を変え登場してくるものと予想される。

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