国内起債市場を斬る 起債評価:7/5~7/9

年度第2四半期の始まりである。この週は3月期決算企業の株主総会が終わったタイミングでもあり、例年、起債が多く見られる時期でとなる。四半期の頭ということで、ノンバンクや銀行といった金融セクター、鉄道関連、電力会社に財投機関等公共セクターといった顔触れが動き、その後に、メーカー等様々な業態が登場してくるというのが、例年の典型的な展開であろう。今年度はオリンピックによって祝日のカレンダーが例年と異なる(ただし、昨年度と同じ)並びになっているため、必ずしも毎年の夏と同じような展開にはならないかもしれないが、まずは、オリンピック開催期間の前までというのが一括りになろう。海外はおろか国内の観客動員も抑制したため、オリンピック開催期間中のテレワーク要請が無意味となる可能性もあり、4回目の緊急事態宣言が発出された中で、東京都心のビジネスコンディションが予想できない。資金調達の必要がある発行体は、オリンピック開催に向けた4連休前までに、動くものと予想される。

この週の起債の特徴は、まずは、多くの年限に渡る複数本立ての起債が目立ったことだろう。それは結果として、募集金額も大きなものとなる。まず、東京ガスは、5年債100億円・10年債150億円・20年債150億円・30年債100億円の計500億円を募集した。中期から超長期まで分散した年限設定であるが、その後に追随した案件と比べると、可愛いサイズであったと言えるだろう。日本政策投資銀行は、スポット発行の20年債100億円の他に、四半期案件として3年債300億円・5年債300億円・10年債400億円を募集しており、合計は1,100億円に上る。また、東日本旅客鉄道も負けていない。10年債100億円・20年債150億円・30年債250億円・40年債250億円・50年債250億円の計1,000億円の募集である。

そして、公共債も負けない。東日本高速道路は、レアな年限である1年債200億円の他に、5年債300億円・7年債200億円・10年債700億円と、超長期ゾーンを含まずに、計1,400億円を募集している。日本政策投資銀行の3年債も同様だが、東日本高速道路の1年債もオーバーパー発行であり、いずれも利回りは0%となっている。住宅金融支援機構の財投機関債も、5年債300億円・10年債250億円・15年債100億円・20年債100億円の計750億円と大規模の募集となった。なお、これらの複数年限と比べると、3本立ては可愛く見えてしまうが、地方公共団体金融機構も、5年債200億円・10年債350億円・20年債200億円の計750億円を募集している。

これらの大規模な起債の陰に隠れるかのように、SDGs債の募集も引続き、見られている。そもそも、東日本高速道路債は全年限がソーシャルボンドとなっており、住宅金融支援機構債も15年債と20年債はグリーンボンドの認定を得ている。その他に、中部電力の10年債がグリーンボンド、川崎重工業の10年債がサステナビリティボンド、京阪ホールディングスの10年債もサステナビリティボンドになっている。公的機関でない民間企業の場合には、火力発電で大量の化石エネルギーを燃焼し炭酸ガスを排出していたり、オートバイ等の内燃機関が不可欠な輸送用機器を製造していたり、見た目は電車の運航でクリーンかもしれないが電気の創出過程を考えると炭酸ガス排出に依存している、これらの発行体が、グリーンボンドやサステナビリティボンドを語り債券を募集することは、やや口幅ったいところであるが、よりクリーンな事業活動に向けた努力を行っているということで、前向きに評価しておきたい。

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