国内起債市場を斬る 起債評価:2/7~2/11

金曜日が建国記念の日の祝日で営業日が少ないことに加え、12月末決算の発表シーズンということもあって、民間企業による社債の募集は少ない。くわえて、世界中がロシア軍のクロアチア侵攻の危機の最中に冬季五輪ROC代表のワリエラドーピング問題が彷彿。市場が乱高下する中で、先行き不安心理を増幅させている。

中央日本土地建物グループが、5年債140億円と10年債40億円を募集しているが、両年限ともみずほ証券による単独引受であって、シ団を組んでの募集体制は構築されていない。2月中旬以降に年度末をにらんで起債が増えることは確実視できるのだが、先行きの金利上昇に対する懸念は日銀による指値オペの取組みもあって、沈静化しつつあるようにも見える。もっとも、影響を受けるのは、10年付近から超長期に渡る年限であり、概ね7年以下の年限であれば、日銀によるイールドカーブコントロールの効果はまだ有効であろう。

こういった環境では、自然と公共セクターによる債券の募集が目についてしまう。地方公共団体金融機構は、毎月の10年債を300億円募集している。今年度の10年債では7月に募集した第146回債が0.09%クーポンと低い水準になったが、今月の第153回債は0.274%クーポンと、倍率だけで見ると三倍を上回る高さになっている。こういった微小な数値に関しては倍率を見ることが適切でなく、差を取るとわずかに18.4bpsである。第146回債のクーポンが0.09%と極めて低いのが、異常なためと考えるべきであろう。ただし、わずかながらも金利水準が上昇していることは事実であり、今後の推移を注視しておくべきである。

一方、高速道路会社の中で、首都高速道路と阪神高速道路とが社債を募集している。首都高速道路は、東日本高速道路等と同じように、R&IのAA+格だけでなく、ムーディーズのA1格に加えてJCRのAAA格を取得しているが、阪神高速道路はR&IのAA+格しか格付けを取得していない。複数格付けに対する自己資本比率規制の掛け目によるものであるが、日本国債と同水準の符号という意味では、阪神高速道路のように取得する格付けを絞るのも、一つの判断だろう。なお、阪神高速道路の社債は、高速道路の建設・整備という使途でソーシャルボンドの認定を得ているが、首都高速道路の社債はSDGs債の認定を得ていない通常の社債である。

また、鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、5年債80億円および10年債100億円を、サステナビリティボンドとして募集している。同機構もかつては、複数の債券を同時に募集する際に、特定の年限だけソーシャルボンドの認定を得たこともあったが、近年は募集する債券を一括してサステナビリティボンドとして認証されている。同機構の業務内容を考えると、現状のような取組みが適切であると思われる。

昨年の日本郵船による募集以降、トランジションボンドの募集は止まっていたが、複数の発行体によるトランジションボンドの起債観測が上がっている。企業のグリーン化・気候変動に向けた努力を評価し促すためにも、こういった債券の募集が続くのは好ましいだろう。

コメントは受け付けていません。