国内起債市場を斬る 6月末特別号:7月に起債ラッシュはあるのか?

前週は株主総会シーズンでサムライ債を除くとほぼ起債はなかったので、少し近視眼かもしれないが、この7月に起債ラッシュがあるかどうかについて検討してみたい。起債ラッシュに厳密な定義などはないが、イメージとしては1日に10以上の発行体が複数本立ての社債等を募集する状況が二営業日にわたって見られるような状況である。過去を紐解いてみると、発生しているのは月の中旬頃で、7月・9月・11月・12月・3月といったタイミングで見られることがある。このタイミングには理由がある。一つは社債等の募集が困難な時期になる前に一斉に募集するといったもので、半期末を控えた9月、年末を控えた12月、年度末を控えた3月といったタイミングで生じるのは、この要因である。一方、それらとは異なる理由から生じる可能性のあるのが、7月と11月かもしれない。この二月については、募集不能となるタイミングの前ではなく、逆に、期末や半期末の決算発表や株主総会といったイベントが終了した後といった要因が考えられる。

起債ラッシュの発生する可能性のあるタイミングは、このように、1年間に複数回存在しているが、常に発生するものではない。発行体の資金調達意欲にも左右されるし、投資家の購入意欲の有無も重要である。また、それらの背景にある金利の先高観や経済見通しといったものも影響する。M&Aなどによって発行体側に資金調達ニーズがあり、投資家がクレジット投資に注力したいという意向があり、需給が見合っているのならば、先行きの金利は上昇しないという見通しがあったり、クレジットの先行きに対する警戒感は低いのかもしれない。金利がまもなく上昇するという見通しであるならば、発行体の早期調達ニーズと投資家の購入意欲はマッチしない。

現在の金融・経済環境を考えると、超長期債に関しては金利上昇に対する警戒感が少なくない。日銀は7年や10年までに関しては、イールドカーブコントロールを死守する姿勢を示しているため、それを越えた超長期ゾーンにまで手が及んでいない。2016年初めに単純なマイナス金利政策を導入した際には、20年ゾーンまで全てゼロ金利近傍まで金利は低下したが、現状はそういう展開になる可能性が低く、むしろ日銀は超長期の金利上昇を妨害しないと考えられる。したがって、超長期の起債に対しては、発行体の調達ニーズと投資家の購入意欲は乖離している可能性が高い。そのため、超長期年限の起債での金額積み上げは、難しいのではないか。

一方、10年以内の金利に関しては、来年度頭に黒田総裁が任期満了を迎えるまで、水準の上昇を見込むことが難しい。日本経済に関しては、欧米のような急速な金融緩和抑制による景気のオーバーキル展開がは見込まれないため、引続き、微温経済といった感じで低金利と低成長が続くと思われる。したがって、10年以内の社債等の起債環境は、良好な状況が続くのではなかろうか。投資家のSDGs債に対する購入意欲も強く、7月には様々な発行体がこぞって、グリーンボンドやトランジションボンド等を募集する準備を進めているようであり、10年以内の年限におけるSDGs債の募集が、7月の起債市場の特徴になりそうだ。ただし、超長期ゾーンの起債が想定通り盛り上がらないのであれば、起債ラッシュにまでは至らない物と想定される。

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