国内起債市場を斬る 起債評価:7/4~7/8

ようやく株主総会明けの起債市場で、社債等を募集する動きが活発になって来た。それでも、最初に動く業態は、いつもと変り映えしない。まずは、電力関連である。JERAは6年債101億円と25年債103億円という、年限も金額もちょっと変わった社債を募集した。これが呼び水になったものの、その後の電力関連の起債は、やや苦戦した状況となった。九州電力は3年債70億円・6年債150億円・18年債81億円と、これも珍しい年限の組み合わせと金額である。電源開発の3年債は、募集金額が239億円と完全な端数での発行である。その後も、北陸電力は3年債200億円と10年債100億円の募集を目指していたとされるが、最終的には3年債166億円と10年債73億円に募集額を絞っている。エネルギー価格の上昇と夏場の電力不足に対する懸念もあって、電力関連に対する警戒感が高まっているのである。その後に募集された中国電力の3年債も、146億円に募集額を絞っているなど、電力債に関する市場の変調が懸念されるところである。金曜日に募集された関西電力債は、3年債200億円と20年債70億円とまとまった金額になったが、中部電力の20年債は92億円と100億円に満たず、北海道電力の10年グリーンボンドも50億円のみであった。

もう一つの早期に動く業種としては、鉄道を挙げることができる。東日本旅客鉄道は3年債150億円・30年債100億円・50年債200億円と、年限を絞っての募集となっている。短期と超長期との極端に年限が分散している。しかし、3年債のクーポンが0.24%であるのに対し、50年債のクーポンは1.854%と7.7倍ちょっとでしかない。先行きの金利が上昇すると思うならば、明らかに3年債を選ぶべきだろう。また、京王電鉄は10年債120億円と20年債80億円を募集している。超長期年限の金利水準が変化して来たことで、やや超長期の債券募集が抑制されているようにも感じられる。

既に、北海道電力のグリーンボンド50億円には触れたが、その他のSDGs債としては、日本電気の5年・7年・10年のサステナビリティリンクボンド計1,100億円、川崎重工業の10年グリーンボンド90億円、出光興産の5年・7年のトランジションボンド、三井不動産の5年・7年・10年のグリーンボンド計800億円と、相変わらず本数も金額も多くが募集されている。電力債が需要に合わせて募集金額を減らしているのに対し、SDGs債は多くが100億円単位での募集である。引続き、投資家のSDGs債に対する購入意欲は強いようだ。

なお、住宅金融支援機構は5年債200億円・10年債100億円・15年債100億円・20年債150億円の一般担保財投機関債を募集しているが、これらの中で、20年債のみがグリーンボンドとされている。今年度に入って、これまで同機構が募集したグリーンボンドは、政府保証債のみであったが、ようやく従来と同様に財投機関債でのグリーンボンドが見られるようになったことは、一つの変化とも言えよう。

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