国内起債市場を斬る 起債評価:4/3~4/7

2023年度の起債市場が幕を開けた。実際に社債等の募集が行われたのは、7日の金曜日からである。10年利付国債の入札や地方債の条件決定を踏まえて、金曜日から募集開始というのは通常の月初と考えても違和感がない。年度の始まりというタイミングなので、まだ多くの銘柄が殺到するという状況にはなっていないが、様々な業種が社債を募集している。

年度や四半期の始まりに最初に動くのが電力会社というのは、一つの定番である。この週にまず動いたのは東北電力の10年債であった。電力会社に関しては、エネルギー価格の上昇に加えてカルテルの摘発といった不祥事も相次いでおり、必ずしもスプレッドのタイトニングは観測されていない。しかも、日銀総裁の交代を踏まえて10年国債利回りが再び上昇傾向となっていたことから、クーポンは1.14%と1%を大きく上回る水準となった。

期初の定番と言えば、電力の次はノンバンクである。7日に募集されたノンバンクの社債は、東京センチュリーの4年債300億円であった。国債対比+48bpsで0.55%クーポンという設定は、中期年限の国債利回りが依然として0.1%にも満たない水準であることを示しており、日銀によるイールドカーブコントロールの見直しが中期以下の年限には及ばないと市場で考えられていることの表れであると言っていいであろう。

期初における起債の定番となるもう一つの業態は、財投機関債である。電力、ノンバンクの次は、銀行か財投機関といったイメージが例年の事象であり、欧米の金融機関での経営問題が注視されている現状では、銀行社債よりも財投機関債が先に募集されるのも当然であろう。7日には、日本政策投資銀行が3年債・5年債・10年債各300億円を募集している。3年債のクーポンは0.1%と低く、5年債で0.349%となり、10年債でようやく0.785%となっている。10年債はスプレッドプライシングが採用されており、国債対比スプレッドは+32bpsで条件決定されている。国内外の格付会社から日本国債と同等の信用力評価を得ている発行体としては、やや厚めなスプレッドと考えて良いだろう。10年国債利回りのボラティリティの高さを織り込んだものと見られる。

この週のもう一つの起債は、ヒューリックによる3年債400億円の募集であった。不動産会社という不安要素と、みずほフィナンシャルグループと親密であるというポジティブな要素とが混在しているが、意外にも、メガバンクと親密な不動産関連会社は未だに統合が進んでおらず、ヒューリックは厳然と旧富士銀行系列であることが知られている。同じ金融グループの傘下に、旧第一勧業銀行系の中央日本土地建物や、旧日本興業銀行系の日鉄興和不動産などが並立しているのは、他のメガバンクも同様の状況にあり、日本の金融グループの統合は、平成元年から9年入行の銀行正社員の役職定年後就労先の確保という意味では、リース会社やその他金融同様、終身雇用を未だに踏襲しようとする日本的銀行経営戦略も理解できる。

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