国内起債市場を斬る 起債評価:7/10~7/14

この週の起債については、金額面においてSDGs債が圧倒的に目立っていた。中でも、NTTファイナンスが最大額の募集をしている。まずは、周辺の銘柄から見て行くと、関西電力および九州電力が複数本立ての起債の中で、10年債のみをグリーンボンドとしている。いずれも再生エネルギー関連の資金使途としているが、情報開示等の観点から超長期のグリーンボンドについては懐疑的なスタンスであるものと思われる。確かに、15年や20年のコミットメントを掲げ毎期の情報開示が求められることを考えると、10年債のみをグリーンボンドとするのは理に適っているかもしれない。発行体の事業目的そのものに直結しているソーシャルボンドとは、発行体のスタンスは異なる可能性が高い。

JR九州は10年のグリーンボンドを募集している。鉄道会社だとグリーンボンドでなくトランジションボンドではないかという気もしたが、具体的な資金使途を見ると長崎や鹿児島中央の駅施設やビル関連であって、鉄道会社というより不動産会社の側面に基づいた起債であった。日本郵船の5年及び10年のトランジションボンドは、日本で最初に公募のトランジションボンドを発行した企業らしく、資金使途をLNG燃料船関連としており、明確でわかり易い。

ソーシャルボンドを4本立てで募集したのが東日本高速道路であった。2年債200億円・5年債300億円・7年債100億円・10年債250億円と計850億円に上る。公共的なインフラを管理する同社など高速道路運営会社の発行する債券がソーシャルボンドの認定を得ることに違和感はないし、敢えて認定を得なくても公共性の認識は共有されている。ラベルの認定機関に収益機会を与えているだけのようにも見えるが、購入意欲を表明する等SDGsに関する意識の高い投資家には、そのラベルに意味があるのだから、発行体も、投資家も、認定機関も、皆がWin-Winの関係になることが可能なことが、SDGs債の特徴でありメリットであろう。

この週で最大の金額となるグリーンボンドを募集したのが、NTTファイナンスの4本立てで、3年債300億円・5年債1,100億円・7年債500億円・10年債1,900億円と合計3,800億円である。かつてはNTTそのものが起債することもあったが、近年は金融子会社がまとめて資金調達を行う姿が目に付く。今回の資金使途は、5G関連やFTTH関連、再生可能エネルギー関連等で、ややグリーンボンドというよりサステナビリティボンドとした方が適切ではないかとも思われるが、その判断は認定機関と投資家に委ねることが適切だろう。AA+(R&I)格及びAAA(JCR)格といった格付けの高さは言うまでもなく、10年債の0.838%といったクーポンの水準は投資妙味を感じさせる。

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