国内起債市場を斬る 暑気払い特別号:金融緩和政策の修正と起債市場への影響

6月末決算の発表時期がはじまるというタイミングに加えて、週末に開催された日本銀行の金融政策決定会合において何らかの金融緩和政策の「修正」が行われる可能性が懸念されたため、前々週央、週末において社債等の募集が観測されなかった。
前者の要因は昨年も同じであり、1年前の同時期を見ると個人向け社債くらいしかローンチされていない閑散期でもあった。しかし後者は、今年度当初に日銀総裁が交代したこともあって今年の特殊要因と考えて良い。

今回の金融政策決定会合において金融緩和が見直されるかどうかについて、事前の観測報道は酷いものであった。国会での答弁やメディアが報じるエコノミストや運用会社の観測記事に関連して、特に海外系の運用会社が日本国債のショートポジションを積み上げた等も報じられていたが、為替も金利も水準が決定会合の始まる前から、観測を織り込みつつ大きく変動した。特に、会合2日目の朝に日経新聞朝刊が報じた内容は、ほぼ決定会合に執行部が提案した内容のままであり、本来はブラックアウト期間として日銀関係者はメディアに接触することを禁じられている時期である。従来もブラックアウト期間に政府関係筋から情報が流れたという観測の見られたこともあるが、今回の事前報道に関しても、決して褒められるような状況にはなかった。

今回の金融緩和政策の修正は、10年国債金利の変動幅を柔軟に運営することとしたものである。特に、具体的に1.0%での指値オペの実施を明示しており、10年国債利回りが0.5%を上回る水準になることを容認すると明示したのである。これは事前の市場の期待と合致するものであるが、従来の金融緩和政策をレビューした後に具体的な見直しを実施するのでは、遅いという判断なのであろう。なかなか前任者の政策を見直すことのなかった植田執行部も、ようやく重い腰を上げたという理解であり、7月に動いたというある種のサプライズを伴ったものであった。決定内容が発表された後に、円ドルレートは3円程度上下し、株価も大きく値を下げる状況が見られた。

今回の見直しの直接の影響を受ける10年国債利回りも、金曜の午後に一時0.575%を付けるなど、上昇を見せており、発行体がこの週に条件決定を避けたのは適切な行動であったと思える。無理に金曜の午前中までに条件決定を行っていると、購入者は引けでは既に含み損を抱えるという状況に陥り、発行体や証券会社の評価が下がっていたことだろう。今後の10年国債利回りがどのあたりで落ち着くかは市場に任せることになるが、緩やかにでも1%に向かって動く可能性がある。金利水準のみならず、為替や株価に与える影響を注視すべきであろう。なお、今回も社債オペについては、特に文言の変更は見られず、社債等買入れのスケジュールを見ても月1回で1,000億円程度という規模の変更も見られない。既に、市場の注目は低下しているものと思われるが、必要度が低下した取組みをだらだらと続けるべきではないのではないか。

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