国内起債市場を斬る 起債評価:7/31~8/4

ようやく起債市場で社債等の募集がはじまったかと見ると、すべての銘柄がSDGs債という状況であった。ある程度は予想された展開とは言え、SDGs債が普通の存在になりつつあるとも考えられる。そうなるとグリーニアムといったスプレッドのタイト化期待は画餅に終わるかもしれない。

まず、日本政策投資銀行が2年物サステナビリティボンド100億円を募集している。S&PのA格を除いて、他の格付会社からは日本国債と同じ符号の格付けを取得しており、政府との距離の近さを考えても、信用懸念は小さい。一方で、国債の利回りは2年債でギリギリのプラス水準になっているが、利回りは余りに低い。日本政策投資銀行の2年債は国債対比+10.5bpsでプライシングされており、相対的な投資妙味を感じる投資家も少なくないだろう。株式会社形態であるとか、名称に「銀行」が付されているとか、マイナスに評価する材料は少なくないが、先行きの2年で何か大きな変化があるとは考え辛い発行体ではなかろうか。

次に、総合切削工具メーカーであるオーエスジーは5年債50億円を募集しており、グリーンボンドの認定を得ている。工場の改修費用に充てるとしており、50億円の小額の起債であるために、消化に問題はなかったものと考えられる。取得した格付けはR&IのA格である。

最後に、横浜高速鉄道と東京臨海高速鉄道が、いずれも10年債を募集している。前者はみなとみらい線の運営及びこどもの国線の保有を行う鉄道事業者であり、基本的に東急電鉄と密接な関係を有している。主要株主としては、横浜市と神奈川県とで過半数を占める。後者は、りんかい線を運営する鉄道事業者であり、東京都が90%以上の株式を保有する第三セクターであって、運営はJR東日本との関係が深い。そもそもが旧国鉄の京葉貨物線を転用した区間が多く、現在も埼京線などとの直通運転が行われている。いずれの会社も単体での事業遂行が困難であり、東急電鉄もしくはJR東日本との関係が重要であり、大株主である地元の地方公共団体の意向も無視することが出来ない。格付けは、横浜高速鉄道がJCRのA+格であり、東京臨海高速鉄道はJCRのAA格である。

横浜高速鉄道が募集したのはグリーンボンドで、みなとみらい線建設資金の借換えとされている。東京臨海高速鉄道が募集したのはサステナビリティボンドで、鉄道車両や施設の環境対応に加えて、安心安全な輸送環境を整備することも目的としているため、サステナビリティボンドを選択したようである。いずれも国債対比のスプレッドでプライシングされており、前者は+45bpsで1.092%クーポン、後者は+31bpsで0.952%クーポンとされている。募集金額は前者が60億円で後者が80億円と必ずしも巨額ではなく、格付けの差がそのままスプレッドの違いに結び付いたものと考えられる。1%の絶対水準を越えた横浜高速鉄道の方が、投資対象としては魅力的に写るのかも知れない。

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