国内起債市場を斬る 起債評価:8/7~8/10

金曜日が「山の日」であることに加え、旧盆の休暇期間を迎え、日本中が「甲子園」「高校総体」「LPGA全英」「女子サッカーWC」に沸いているため、起債市場の動きは鈍るかと思われたが、引き続き、SDGs債関連の動きが目立つ展開となった。この週に条件決定し募集した案件ではSDGs債の認証を得ていない発行体でも、別途の起債において認証を得てSDGs債の調達をしているものばかりである。5年債1,200億円を募集した中日本高速道路は、過去に米ドル建ての社債でグリーンボンドの募集歴が複数回あり、同業各社が円建ての国内債券募集でソーシャルボンドの認定を得ていることを考えると、SDGs債の周辺に位置していることは間違いない。また、日本高速道路保有・債務返済機構の併存的債務引受条項が付されており、後述のように同機構がソーシャルボンドの積極的な発行体であり、実質的にはSDGs債としても誤りではあるまい。また、15年債と20年債とで計350億円を募集した住宅金融支援機構も、昨年までの財投機関債や今年6月の政府保証債までグリーンボンドの認定を得た債券を募集している。「省エネルギー性に優れた住宅」を対象とした住宅ローン債権の買取代金を資金と使途する場合にのみグリーンボンドの認証を得ているのは、厳格な資金運営を行っていることの表れであって、適切な取り組みであると考えられる。

その他に募集された社債等の中でも、住友三井オートサービスは3年債と5年債とを各100億円募集したが、5年債のみサステナビリティボンドの認証を取得している。SDGs債の認証を得て社債等の募集をすることは、債券の存在する期間中の情報開示を義務として伴うものであり、対象を絞ることも認証の効力を示す意味のある取組みであろう。もっとも、年限の短い方が開示の負荷は軽いと考えるのは筆者だけではない。

中央日本土地建物グループの募集した5年債170億円は、田町駅前の建て替えプロジェクトを使途とするグリーンボンドであり、業種の特性にマッチしたものと理解しやすい。また、イオンの5年債及び10年債計500億円は、二酸化炭素排出量や廃プラスチック、食品廃棄の量削減を目標としたサステナビリティリンクボンドであり、事業内容とリンクした社債の内容設計として良いものであろう。目標未達の場合は寄付を行うとする典型的な日本型サステナビリティリンクボンドである。最後に、最近ソーシャルボンドを積極的に募集している日本高速道路保有・債務返済機構は、10年債・16年債・20年債・22年債の四本立て計520億円をソーシャルボンドの認定を得て募集している。高速道路各社の社債や財投機関債の多くは事業内容からソーシャルボンドとしての基本的な適格性を有していると考えられることから、情報開示の負荷との折り合いが取れるなら認定を得ることは問題ないだろう。もっとも、だからと言って、SDGs債の認定を得ていない社債等よりタイトなスプレッドで募集できるものではなかろうが・・・。

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