国内起債市場を斬る 起債評価:8/28~9/1

8月中旬から予測したように、8月最終週からは上期末に向けた起債ラッシュが始まった。早くも火曜日の29日に社債等の募集があったことが、まず、その序章であったと言える。火曜日から動いたのは、ノンバンクのホンダファイナンスとメーカーのジェイテクトで、いずれも二本立ての起債である。金額は必ずしも大きくなかった。両社に共通する5年債は、いずれも格付けがR&IでA格以上と高いものの、0.5%を上回る水準になっている。7月に日銀がイールドカーブコントロールの見直しを行ったことで短い年限の国債もマイナス金利から脱却しており、5年債の利回りがようやくまともな水準に見えるようになって来たと言えるであろう。

つづく30日の水曜日に募集されたのは、前日と同様の構図で、ノンバンクの三井住友ファイナンス&リースとメーカーのTOYO TIREであった。前者は3年債・5年債・10年債の三本立てで計490億円、後者は5年債と10年債とで計150億円を募集している。この日は更に、三井住友トラストホールディングスが、個人投資家向けと機関投資家向けの劣後債計410億円を条件決定している。劣後プレミアムが乗り、格付けがR&I及びJCRのA+格という評価であるが、当初5年間のクーポンが1.149%と1%を上回ったことは、投資妙味の拡大に繋がっている。

週後半の31日の木曜日と月が替わった金曜日の1日は、小規模な起債ラッシュと言えるるだろう。個別の銘柄についてすべてを触れる余裕はないが、ノンバンクや電力、銀行といった定番の業種による起債が目立つ中、廃棄物処理やリサイクルを行うTREホールディングス株式会社(9247)と化粧品や日用品商社の株式会社あらた(2733)という2社の初回債も募集された。金額の面では、個人向け社債を計2,100億円条件決定した三菱UFJフィナンシャルグループの劣後債が、群を抜いて大きい。また、機関投資家向けでは、大和ハウス工業の3年債・5年債・10年債の計1,000億円の募集の他、かんぽ生命の劣後債も1,000億円募集されている。この週の社債等の条件決定額は、銀行と保険の劣後債が大きく金額を稼いだ形になっている。足元の金利水準がやや上昇したとは言え、顕著な先高観がない中では、投資家による社債等の購入意欲もそれなりに強く、一般的に旺盛な購入意欲が見られたようである。

最後に、SDGs債の募集について触れておく。住友商事の10年債と東京電力リニューアブルパワーの7年債、TDKの5年債がグリーン、前述のTREホールディングスの5年債がサステナビリティリンクとなっており、その他には、複数本立ての一部のみというのが、成田国際空港の5年債と10年債の内10年債がグリーン、関西電力の10年債と20年債のうち10年債がグリーン、前述の大和ハウス工業の三本立てのうち5年債と10年債がサステナビリティリンクであった。既にSDGs債による資金調達が一般的なものとなりつつあり、却って資金使途が既発債やCP、借入金の返済の場合のみがSDGs債のラベルを取得していない状況になりつつある。SDGs債が一般化してしまうと、グリーニアム(8月22日号でも述べたが「グリーン」と「プレミアム」の合成語)によって割安に起債できるかもという発行体側の思惑は、期待外れに終わるかもしれない。今後の推移を見守りたい。

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