国内起債市場を斬る 起債評価:9/4~9/8

2023年度上期末に向けた起債ラッシュが続く。とはいっても、猛ラッシュでないのは、金利の先高感が必ずしも共有されていないからなのだろうか。一般には、7月に日銀が金融緩和政策を微修正したこともあって、今後の長期金利は上昇する可能性が高いと思われている。その上、物価上昇の続いている現状を考えると、マイナス金利の見直しをも意識する市場参加者の声も少なくない。確かに金利上昇の強烈な勢いは感じられないものの、徐々に金利先高感が生じて来るシナリオは意識して置いた方が良いだろう。歴史的には、金利上昇は短期間で急速に進むことが少なくない。もしかすると、上期の起債ラッシュが終って2週間ほどが経過し10月の下期入りを迎えると、様々な発行体による資金調達の大きな動きが生じるのかもしれない。ましてや可能性は低いが、内閣改造によって財政出動といた話が俎上に上るようなら、金利上昇は必至となるだろう。しばらくは金融財政の両面から金利上昇の可能性を注視して置いた方が良いのではなかろうか。

この週の起債は本数こそ多くないものの、金額面では大型に分類される起債が相次いでいる。一般的に、案件全体で1,000億円以上になると、大型起債と考えて良いというのが、日本の起債市場のコンセンサスであろう。大型起債であれば、その後の流通市場での出会いも少なからず見られると期待されるが、過去に日証協の実施した調査の結果では、必ずしも大型起債であればセカンダリーでの出会いが多いということはないようだ。それでも30億円や50億円といった小額の起債では、流通市場での出会いを目にすることはほとんどなく、基本的にバイ&ホールドの機関投資家が多い日本の社債市場の構造を考えると、大型起債であることはセカンダリー価格の適正化に資するものと期待される。

この週に募集された大型起債を挙げると、三井不動産のいずれもグリーンボンドで10年債500億円・15年債100億円・20年債400億円の計1,000億円、三井住友フィナンシャルグループの永久劣後債2本で計2,110億円、中日本高速道路の5年債1,000億円、パナソニックホールディングスの5年債1,450億円・7年債300億円・10年債850億円の計2,600億円と並ぶ。別途、SBIホールディングスの個人向け4年債1,000億円が条件決定されている。基本的に上期末の機関投資家の購入ニーズは強く、大型の起債でもいずれも順調に消化されているようである。

これらの大型起債の陰に隠れるように小額の起債も見られており、加えて、財投機関によるソーシャルボンドやサステナビリティボンドの調達も、日本高速道路保有・債務返済機構、都市再生機構、国際協力機構といった発行体が行っている。三つの発行体による起債を並べてみると、5年から40年の幅広い年限で総計1,000億円を越える金額が募集されている形である。スプレッドこそ10年債で国債対比+10~12bpsと強い妙味はないが、財投機関債は信用力でも流動性の面でも相対的に安心な投資対象であり、消化に苦労するような状況ではない。なお、国際協力機構のサステナビリティボンドは、「防災・復興ボンド」と名づけられており、地震や台風といった天災による被害の多い9月に相応しいものであった。

コメントは受け付けていません。