国内起債市場を斬る 起債評価:9/19~9/22

例年であれば、上期末の起債シーズンは前の週までで終了しているはずだが、今年は、もう少し社債等の募集が行われている。一つは、地方公共団体金融機構のFLIPに基づく債券の募集である。地方公共団体金融機構のFLIPに基づく債券は、基本的には、四半期最初の月の下旬に、定例募集する10年債などと年限をずらした形で募集するのであるが、それ以外のタイミングでも募集することがある。FLIPの趣旨を考えると、購入を希望する投資家が存在し発行体の望む年限であれば最低30億円から募集するというものであって、このような時期での募集も妥当であろう。今回募集されたのは、5年債40億円の他、8年債30億円と、9年債30億円が3本の計160億円である。日本証券業協会の公社債店頭売買参考統計値などでは公募債という扱いになっているのであるが、1ショット30億円程度の発行額であると、実際の流通市場での出会いはまず見られず、同様の年限の別の債券の価格から気配値を推察するしかない。地方公共団体金融機構は原則として10年債を毎月募集しており、8年債や9年債の水準を見つけることが容易である。国債を除くと、こうした起債を行うことが容易な発行体は、なかなか見つからない。

信用力の観点からも、地方公共団体金融機構は国債と同等の格付符号を取得しており、概念的には最良の地方公共団体と同じ信用力と考えられることもあって、流動性も高いことが期待できる。また、地方公務員共済組合連合会及び傘下の共済組合等が縁故債を定例で引き受けているだけでなく、公募債も継続的に購入している。総務省傘下の共済組合から見れば、地方債や地方公共団体金融機構債の信用リスクを、ほぼないと期待することには矛盾がない。これらの様々な枠組みだからこそ、FLIPに基づく起債が可能であり、時に、一般的な起債募集のタイミングを外したところでも、債券を募集することが可能になるのである。

もう一つ純粋な民間事業会社が社債を募集したのも、この週としては珍しい。決して考えられないものではなく、条件決定及び募集から1週間程度後に払込みを設定すれば、ギリギリ上期末を跨がずに社債を成立させることは可能である。発行体の意向を引受証券が確認し、投資家が了解すれば、9月20日の条件決定も実現できたのである。5年債100億円を募集したのは丸紅であり、格付けはR&I及びJCRからAA-格と高水準の評価を取得しており、知名度の高さもあって、投資家側に検討の時間が長くなくても判断が可能だったものと推察できる。100億円という手ごろな発行額も、過度の消化懸念をもたらすものではなかった。国債対比+25bpsというスプレッドプライシングで条件決定されたことも、投資家の判断に資すると言えるだろう。つまり、巨額の募集ではなく、ある程度の知名度があって、格付けも高水準にある発行体ならば、このようなギリギリの社債募集も不可能ではないという実績となった起債であった。

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