国内起債市場を斬る 起債評価:10/2~10/6

年度の下期に入って、ラグビーWC、アジア大会の興奮が冷めやらぬ中、MBLはプレイオフ開始、プロ野球CS出場をめぐっての熱気の中、鹿児島特別国体が本格的にスタートした。起債市場でも社債等の募集が再開される。まずは、10年長期国債の入札による基準金利の確認からであるが、国債入札の後に政府保証債や地方債と続いて行ったのは過去の話で、現在は、長期国債入札の前後から社債等の条件決定が行われる。特に、10年長期国債の入札は火曜もしくは木曜日に行われることが多く、結局のところ、下期入りした週の金曜日に最初の盛り上がりを見せるというのが典型であろう。しかも、昔から初めに動くのは、電力、銀行、ノンバンクというのがパターンであり、それに加えて、財投機関等公的の一部が混じる形である。今年度下期の頭も、典型的な動きが主であった。

まず、電力の動きを見ると、中部電力の17年債50億円に続いて、中国電力が5年4か月債200億円・10年債160億円・23年債110億円を募集しており、4年5か月債はトランジションボンド、10年債はトランジションリンクボンドの形になっている。やや半端な年限での募集が多いのは気になる。更に金曜日には、東京電力パワーグリッドが5年債280億円・10年債590億円・15年債330億円と計1,200億円を募集している。また、同様の公益業態である西部ガスホールディングスが10年債100億円を募集している。この週は、電力・ガスに続いたのが、鉄道である。JR東海が20年のグリーンボンド200億円を募集した他、JR東日本が10年債110億円・20年債160億円・30年債80億円・40年債130億円と本数が多いわりに計480億円と同社にしては比較的少額の募集に留まっている。いずれにせよ、これらの発行体については、公益性が高いこともあって投資家からの信認は強く、やや年限が長めであっても投資家が確保できている。国債利回りの上昇を受けて、JR東日本の10年債ですらクーポンが1.025%と1%の大台に乗っており、投資家の利回り水準に対する目線は上がっているようだ。ましてや超長期債の利回り水準は、低金利に目の慣れた投資家が見ると、十分に魅力的に映るだろう。今後の長期から超長期の金利水準動向が注目される。

銀行セクターでは、三菱UFJフィナンシャルグループがAT1の永久劣後債を計1,430億円募集しており、また、ノンバンクではトヨタファイナンスが3年債と5年債を各800億円募集するなど、大型の起債が取り組まれている。公共セクターでは、住宅金融支援機構が20年債80億円を募集した他、日本政策投資銀行が3年債400億円・5年債200億円・10年債300億円の計900億円を募集し、西日本高速道路も2年債200億円及び5年債700億円の計900億円を募集している。結局のところ、銀行・ノンバンク・公共といったセクターが、大きな募集金額となっているのも下期の頭ということか。

全般的に金利の上昇と先高感が出はじめたことなどからクレジット市場の状況悪化が懸念される中であったが、スプレッド水準の変更や起債金額の修正などの工夫によって、いずれの新発債も消化には問題なかったようである。果たしてこの後の起債案件の状況はどうなるか。まずは、日銀による金融政策の変更有無に注目が集まるところであり、加えて、金融庁が社債市場の活性化に再び取り組もうとする動きも見られ始めている。

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