国内起債市場を斬る 起債評価:11/13~11/17

ようやく3月期決算企業の上期末決算発表時期が終わり、起債市場にも社債等の募集が戻って来た。木曜日に募集された案件は、グリーの3年債60億円とポケットカードの5年債100億円とややレアな銘柄であったが、17日の金曜日に募集されたのは、商社や電力、メーカーの社債と合わせてバラエティをかもし出しており、これから12月中旬までの募集期間に起債市場の盛り上りを期待させるものとなった。この背景には、年末に向かう時期的なものがあることに加えて、金利の先高感が弱まったことで、発行体側も社債等を募集し易くなったものと考えられる。

社債等の他に、17日の金曜日に初めて募集されたのが、グリーン共同発行債と呼ばれる複数の地方公共団体によるグリーンボンドの発行プログラムに基づく10年債であった。地方債の10年共同発行市場公募債は平成15年に始まる長い歴史があり、道府県と政令指定都市からなるプログラムに参加する複数の地方公共団体による共同の発行である。地方財政法の規定から共同発行債の信用力はストロングリンクするものと考えられ、プログラムに参加するもっとも優良な地方公共団体と同等と考えられている。東京都がプログラムに参加していないものの、参加する複数の県や市にR&IがAA+格を付しているため、符号としては日本国債と同水準と見て良いだろう。この11月9日に募集された第248回債は、0.948%クーポンで715億円が募集されている。対国債カーブ対比でのスプレッドは+9bpsであった。

今回初めて募集されたグリーン共同発行債は、ベースは同じ共同発行プログラムに基づくものの、グリーンボンドに求められる募集時やその後の継続的な情報開示をまとめて行うことで、各地方公共団体の煩雑さを簡略化する試みである。総務省自治財政局地方債課が国のグリーン推進プログラムに沿って進めて来た取組みでもあり、時代の流れに沿った画期的な取り組みであったと言えるだろう。なお、具体的に参加する地方公共団体は、今月の通常の共同発行債よりも多くなっている。

今回の第1回グリーン共同発行市場公募地方債は10年債で、0.846%クーポンの500億円が募集された。対国債のカーブ対比でのスプレッドは+7bpsとされており、通常の共同発行債に比べると2bpsほどタイトなスプレッドを実現されている。この差分がグリーニアムと理解される。個別の地方公共団体がグリーンボンドを発行しても、なかなか明示的なグリーニアムを考慮した低廉な起債は難しかったが、共同発行の枠組みを利用し同じ月に募集したことで、グリーニアムの存在が明確に確認されたものである。しかし、グリーニアムはわずかに2bpsであり、市場利回りの変動から見れば必ずしも大きな幅ではない。特に、実際のクーポンを比較すると、9日に募集された共同発行債から、クーポンは10.2bpsも低下している。結局のところ、ベースとなる国債利回りの低下幅がグリーニアムより遥かに大きかったのであり、グリーニアムの効果はわずかでしかないことが確認できたと言っても良いだろう。

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