近年の社債等募集は金曜日に集中する。前日が営業日でない月曜は海外市場の動向を確認するために動かず、火曜と木曜は国債の入札が入ることが多いため見送られることが多くなり、消去法で週最後の金曜に社債等の募集が集中するのが典型である。ところが、この週は木曜が「勤労感謝の日」で祝日になっており、前営業日が休日だと社債等の募集が入らないというルールが優先される。そのため、この週の社債等の募集は、22日の水曜に集中した。やれば他の週でも水曜に募集できることの証左なのであるが、追い込まれないとやらないのは人間の性なのかもしれない。なお、この週は、火曜にも大和証券グループ本社が個人向けを含めて計4本1,860億円の条件を決定し、清水建設も5年のグリーンボンド100億円と10年債50億円を募集している。
珍しく水曜に社債等の募集が多く集中した中で、募集金額という意味では、NTTファイナンスの4本立て計2,200億円が圧倒している。かつてはNTT本体が社債等を募集していたものが、ここ数年はファイナンス子会社による社債募集が定着している。NTTの起債運営は古くから発行市場での信頼を勝ち得ており、しかも、グリーンボンドの認定を得ていることもあって、まとまった大きな金額でも消化に問題はない。3年債300億円・5年債900億円・7年債100億円・10年債900億円と、国債と同じ主軸年限の募集額を厚くし、それ以外の金額は抑えるという運営は適切であろう。国債対比のスプレッドプライシングが5年債以上で行われており、R&IのAA+格及びJCRのAAA格と日本国債と同じ符号を得ていながら、5年債で+35bps、10年債で+51bpsとやや厚いスプレッドが乗っている。結果として10年債のクーポンは1.213%という出来上がりであり、投資家への訴求は十分であったと考えられる。
その他にも、様々なラベル付きの起債が多かったのが、この水曜の特徴である。東日本高速道路の2年債200億円はソーシャルボンド、三菱マテリアルの5年債200億円はトランジションリンクボンド、京阪神ビルディングの7年債50億円はサステナビリティリンクボンド、SUBARUの7年債130億円および10年債100億円はグリーンボンド、西日本鉄道の10年債100億円もグリーンボンドと、サステナビリティボンド以外のほとんどの類型が出揃っており、しかも一時は起債が減ったのではと言われていたグリーンボンドがNTTファイナンスも含めると、計2,530億円と最大額の募集となっている。
なお、三菱マテリアルの5年トランジションリンクボンドは、SPTsを未達の場合に利率がステップアップし達成した場合にはステップダウンすることも可能な枠組みのプログラムでの募集であるが、利率の変更が適用されるのはリンクローンであって、債券に対しては未達の場合に寄付もしくは排出権を購入するという日本で一般的なリンクボンドの形式を採用するようである。