国内起債市場を斬る 起債評価:11/27~12/1

ひとつ前の週は、「勤労感謝の日」による飛び石連休であったため、社債等の募集は例外的に22日(水)に集中したが、この週は木曜、金曜と徐々に盛り上がって行く展開になった。中でも月の変わった金曜日には、個人向け社債を含めると計23本の社債等が条件決定されており、年末に向けての動きが目立つ展開となっている。しかも、年末に向かっているというタイミングだけでなく、足元で米国の金利動向を受けて、日本の長期金利も少し低下して来たことが、発行体の募集意欲を高めており、投資家側もクーポンが高いうちに買ってしまいたいという想いに駆られているようだ。水曜からの募集案件は数多くなったが、募集した社債等の消化に苦労したという話は聞こえていない。

29日(水)に募集されたのは、ノンバンクと化学メーカーの社債であり、中でも旭化成の3年債・5年債・7年債・10年債の4本立て計600億円が目立っている。水準が下がったとはいえ、10年国債利回りは未だに0%より高く、R&IとJCRからAA格の高い評価を得ている旭化成の10年債が1.232%クーポンというのは、十分な投資妙味があると感じる投資家も少なくないだろう。30日(木)には、ダイビルの5年グリーンボンド120億円の他、JERAが通常の社債計400億円、JCRのBBB+格を取ったイチネンホールディングスは1.3%クーポンの3年債100億円を募集している。

案件集中日となった1日(金)は、個人向けの電力債を九州・東北・北海道・北陸・四国の5電力が条件決定している。北陸電力のみ5年債で、他は3年債である。また、九州電力は、別途、機関投資家向けに円Tibor連動の5年物変動利付債150億円を募集している。中期年限も金利がこれから上がると考えるならば、5年物の変動利付債は面白い投資対象であろう。なお、九州電力は個人向け3年債には、R&IのA格とJCRのAA-格を取得しているのに、機関投資家向けの5年物変動利付債には、R&IとJCRの2社に加えて、ムーディーズのA3格も取得している。個人投資家にムーディーズの格付けは不要であるという判断とも考えられるが、格付手数料を抑える効果もあると考えたか、変動利付債の購入者に海外の投資家が含まれる可能性も否定できない。

電力債以外にメーカーの社債が多く募集されたのも目立つが、他にも銀行劣後債や建設、通信業等発行体の業種はバラエティに富んでいる。また、相変わらずのSDGs債も多種多様で、東洋紡の5年サステナビリティリンクボンド100億円、西日本高速道路の2年及び5年のソーシャルボンド計600億円、カネカの5年ソーシャルボンド100億円、名古屋銀行の10年期限前償還条項付劣後グリーンボンド100億円、メタウォーターの5年ブルーボンド100億円、新関西国際空港の20年及び30年ソーシャルボンド計200億円、水資源機構の3年サステナビリティボンド100億円と、発行体の業種が様々なのに加えて、年限もバラエティ豊かである。財投機関債に分類される水資源機構債が3年で、財政投融資計画に基づかない新関西国際空港の社債が20年及び30年の超長期債を募集しているのは面白い。関西国際空港と大阪国際空港の管理等を担当する新関西国際空港は、取得している格付けの符号は日本国債を下回るものの、実質的な政府保証があるとみなしている投資家が多いのだろう。

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