国内起債市場を斬る 起債評価:1/8~1/12

ようやく年末年始の約1か月間の社債募集のない閑散期間を終え、2024年の起債シーズンがはじまった。その間に、能登半島地震の影響もあり、日銀による金融政策の見直しに対する期待が大きく低下している。見直し期待の低下を受けて、株価はバブル経済崩壊後の最高値を更新し、為替も再び円安基調となっている。まずは金融・資本市場の状況を確認し、先行きのシナリオを構築するのが三連休明けの市場参加者の重要な職務となったことだろう。

2024年の起債市場で最初に募集されたのは、12日の日本政策投資銀行の3本立てとJR東日本の2本立てであった(他に、国際協力機構の個人向け5年物の財投機関債も条件決定されているが、同債券募集は15日からになっている)。しかし、これらの顔触れは決して違和感がない。二つの発行体ともが、2023年1月の第2金曜日に社債等を募集した顔触れだったのである。なお、2023年1月は12日(木)から社債等の募集が始まっており、13日(金)には日本政策投資銀行とJR東日本以外にも、東京電力パワーグリッドや日本高速道路保有・債務返済機構や東日本高速道路も社債等を募集している。ちなみに、国際協力機構も同日に個人向け財投機関債の条件を決定しており、この日に募集等のアクションを起こした三つの発行体ともが、まるで話し合ったように1年前と同じタイミングでの動きとなったのである。

これらの中で、もっとも起債の動きが変化したのが、JR東日本だったのではなかろうか。過去数年の同社の起債パターンとしては、10年債から10年刻みで複数年限の社債を募集するというものであった。ところが、今回の募集に際しても同様のサウンディングは行われたようではあるが、最終的には、10年債と20年債の2年限のみに絞った形での募集となっている。超長期年限の金利の先行きが不透明なこともあって、10年債と20年債のみが選択されたものと考えられる。なお、10年債はE235系の車両や鉄道整備を使途とするサステナビリティボンドとしての認定を受けている。国債対比のスプレッドは、10年債で+33bpsと厚くなっており、出来上がりのクーポンは0.91%になっている。20年債は国債対比スプレッドが+24bpsの1.554%クーポンと、かつて目の慣れていた水準よりも高い位置にある。

一方、日本政策投資銀行は2023年1月と同じく3年債・5年債・10年債という三本立ての社債を募集している。ただし、募集金額は前年の各250億円から、3年債のみ400億円に増額されている。R&Iの格付けだけを見るとJR東日本も日本政策投資銀行もAA+格で同じ符号であるが、国債対比スプレッドを見るとJR東日本の+33bpsに対し、日本政策投資銀行は+11bpsとタイトである。そのため、日本政策銀行の10年債はクーポンが0.69%と低めに映ってしまう。政府との距離を反映したものと言ってしまえばそれまでであるし、完全に民営化した会社かどうかの差なのではあるが、比べるとサステナビリティボンドであるJR東日本の10年債を選択したくなる投資家は少なくないのかも知れない。

コメントは受け付けていません。